他の格闘技からの影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/09 09:34 UTC 版)
柔道の国際化が進む中、外国選手を中心とした技術の変化も見られるようになった。これは、海外の柔道競技者の多くは柔道と同時に各国の格闘技や民族武術に取り組み、その技術を柔道に取り込んだり、試行錯誤の上新たな技術を考案するなど、日々技術を変化(進化)させているからである。技術が柔道に取り込まれている民族武術・格闘技としてはキャッチ・アズ・キャッチ・キャン、ブフ、サンボ、ブラジリアン柔術などがある。技術の変化に対して、世界的に見た海外における柔道は、武道としての「柔道」ではなく、競技としての「JUDO」となりつつあるという指摘があり、柔道本来の精神が忘れられていくのではないかと、柔道の変質を危惧する意見もある。一方で、柔道は発足当初から日本国内の柔術のみならず海外の格闘技を工夫して取り入れて形成されたものであり、国際柔道のような各格闘技を総合したスタイルこそ柔道本来の形と精神に近いと考えている意見もある。「明治時代に嘉納治五郎が日本の柔術諸派から技を抜粋して柔道を作ったとき、柔道は一種の総合格闘技になったのです。さらに今回は、国際的にも柔道が総合格闘技化しているのです。チタオバやサンボ、BJJまでが総合化されているのですね。柔道でメダルを獲得した国が23カ国ということを見ても国際化はかなり進んでいる。」 嘉納治五郎の時代から他の柔術、格闘技から多くの技が導入されていたが、それ以降、他の格闘技から柔道に導入された技としてはジョージアのチタオバの技を改良した帯取返のハバレリ、イランのレスリングからのギャヴァーレ、総合格闘技からの裸絞のペルビアン・ネクタイ・チョークなどがある。国際規定では2013年からの脚掴み全面禁止によりハバレリは一部使用困難に、ギャヴァーレは使用できなくなった。 2012年ロンドンオリンピックでの柔道における日本人選手の苦戦を受けて、就任発足した井上康生日本男子代表監督体制では、「国際化したJUDOは世界の格闘技の複合体になった。柔道の枠の中に収まっていては、新たな発想は生まれない」とし、色々な格闘技が流入した世界の柔道に勝つためにブラジリアン柔術、サンボ、モンゴル相撲、沖縄角力などの民族格闘技との積極的な交流、練習の取り入れを行い、強化を図った。また、組手を取り合う際の対策、強化として柔道の当身の練習に通じる、打撃のミット打ちの練習なども取り入れるなど改革・創意工夫を進めた。 2016年リオデジャネイロオリンピックの柔道を見た溝口紀子は寝技での「待て」が従来より遅くなったのは、オリンピックでは寝技の存在感を上げ、近年、隆盛著しい寝技中心のブラジリアン柔術へ人々が流れていくことを防ぐ意図があるのではないか、と述べている。 2019年、2020年の1月に全日本女子代表チームは強化合宿で日本ブラジリアン柔術連盟会長の中井祐樹らを招き、ブラジリアン柔術の寝技の指導を受ける。
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