人工知能ブームとProlog
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 02:49 UTC 版)
「Prolog」の記事における「人工知能ブームとProlog」の解説
日本において、ICOT の活動時期から1990年代前半に掛けては、いわゆる人工知能ブームの時期であり、人工知能研究への期待はこの時期再び異様に高まった。LISP マシンによる医療情報エキスパートシステムでの成果は、人工知能の研究の成果の一部は情報処理に於いても利用可能なのではないかとの夢を抱かせた。このような評価の中で Prolog は人工知能のアセンブリ言語的な位置づけを期待された。知識情報処理はこの水準の言語を基礎にその上側に築かれるべきだとの意味である。手っ取り早く利用可能な人工知能技術としてエキスパートシステムが選別され、これを支えるナレッジエンジニアの存在とそれを養成するための教育が必要とされた。Prolog はその中心に存在した。日本も例外ではないが、日本以外の国では特に、Prolog の名著は1990年代前半に刊行されている。これは、ICOT の活動とは若干のタイムラグがあるが、この時期社会的に 人工知能向き言語としての Prolog に大きな期待が寄せられていたことの証しである。エキスパートシステムはビジネス分野において広範囲に応用可能な基礎技術であったが、このような低水準な分野への適用はあまり試みられず、この分野からの Prolog 言語への要請はほとんど見られないまま終った。 機械翻訳などの自然言語処理もまた人工知能の一翼を担う分野であるが、歴史的経緯から人工知能ブーム以前から、この言語に最も期待が掛けられた分野であった。しかし、左再帰問題の回避でトップダウン解析の明解さをいきなり殺がれた。さらに句構造文法への適用においては、Prolog が得意とする、句構造に分解して意味に相当するグラフを形成することの他に、極めて膨大な辞書を構造体として定義する必要が展望された。この辞書作成は Prolog とは直接関係しないタスクであることから、次第に Prolog は句構造文法によるアプローチの前線から後退してしまった。統計的言語処理のアプローチでは、単一化等に多くの計算量を費やす Prolog は大量データを扱うのに不向きとされて、利用されることはほとんどない。自然言語処理のテキストの多くが Prolog を用いて解説されているにも関わらず、期待が大きかった割に実務的には、表面に現れている成果はIBM社のワトソン程度にとどまり、自然言語処理はむしろ Prolog 評価の足を引っ張る傾向にさえある。
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