事後措置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 01:54 UTC 版)
「労働安全衛生法による健康診断」の記事における「事後措置」の解説
事業者は、上記の健康診断を受けた労働者全員に対して、遅滞なくその結果を通知しなければならない(第66条の6)。異常の所見が無かった者に対しても通知は必要である。 事業者は、上記の健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者については、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない(第66条の4)。この意見聴取は、原則として当該健康診断実施の日から3か月以内(自発的健康診断の場合は提出日から2か月以内)に行わなければならない。事業者は、医師又は歯科医師から、意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供しなければならない(規則第51条の2)。なお、健康診断において、その雇用する労働者が要再検査又は要精密検査と診断された場合であっても、当該再検査・精密検査の実施は特に有害物質等に係る規則で定められている場合を除き、一律には事業者にその実施が義務付けられているものではない。 就業場所変更等の措置(第66条の5)医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。派遣労働者については、派遣元・派遣先双方が行わなければならない。 厚生労働大臣は、この規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする、とされ、現在「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成8年10月1日健康診断結果措置指針公示第1号、最終改正平成29年4月14日公示第9号)が公表されている。 保健指導(第66条の7)一般健康診断・自発的健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。派遣労働者については、派遣元が実施しなければならない。労働者は、通知された健康診断の結果及び保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。 事業者は、健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、以下の期間保存しなければならない(規則第51条)。自発的健康診断の提出を受けた場合であっても、その提出された書面に基づいて、健康診断個人票を作成しなければならない。 一般の労働者:5年間 ベンゼン等の特別管理物質の製造・取扱業務従事者に係るもの、電離放射線業務従事者に係るもの:30年間 石綿の粉じん発散場所における業務等従事者に係るもの:40年間 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断・特定業務従事者の健康診断・歯科医師による健康診断(定期のものに限る)を行なったときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない(規則第52条)。常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(検査及び面接指導の結果の報告を含む)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない(規則第52条の21)。使用者は、その使用する労働者数に関わらず、有害業務従事者の健康診断のうち指針で定めるものを行ったときは、遅滞なく、健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。これらの報告書について、産業医が選任されている事業場においては、(健康診断を産業医でなく健診機関が行った場合でも)報告書には産業医の記名押印がなされなければならないとする旨の規定があったが(報告書の提出義務がある事業場は、同時に産業医の選任義務がある事業場であるから、産業医が選任されていないということは、法的にあり得ない)、令和2年8月の改正省令施行により行政手続における押印等の見直しやオンライン利用率の向上等の観点から産業医の押印は不要となった。このことは、事業者が医師等による健康診断やその結果に基づく医師等からの意見聴取を実施する義務がなくなったことを意味するものではなく、引き続き、安衛法等に基づき、事業者は医師等による健康診断やその結果に基づく医師等からの意見聴取等を実施しなければならないこと(令和2年8月28日基発0828第1号)。
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