パラレルワールド
パラレルワールド(Parallel universe, Parallel world)とは、ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。並行世界、並行宇宙、並行時空とも言われている。 そして、「異世界(異界)」、「魔界」、「四次元世界」などとは違い、パラレルワールドは我々の宇宙と同一の次元を持つ。SFの世界の中だけに存在するのではなく、理論物理学の世界でもその存在の可能性について語られている。 パラレルワールドを主題とした作品についてはCategory:パラレルワールドを題材にした作品を参照。
概要
「この現実とは別に、もう1つの現実が存在する」というアイディアは、「もしもこうだったらどうなっていたのか」という考察を作品の形にする上で都合がよく、パラレルワールドはSFにおいてポピュラーなアイディアとなっている[1]。
作家の野阿梓は、架空戦記や歴史改変SF作品に見られるような、「もう1つの歴史」を扱う作品と、現実とは異なる次元を扱うパラレルワールドは、SFにおいてはほとんど同じようなものとして扱われてきたとする。その理由として、2つのジャンルはいずれも「あり得るかもしれない世界」を描くことを目指しており、それがSF作家の「究極の夢」だからだと主張する[1]。また、ファンタジー小説の中にも現実を含んだ世界で仮説を述べるというパラレルワールドを扱った小説が登場してきており、認知心理学者の下條信輔は、ファンタジーの基本枠組みそのものとしてパラレルワールドという概念が受容されていると述べている[2]。
また通常「世界線」という言葉は本来、相対性理論で使われる言葉であったが、2010年代以降、ゲーム「シュタインズゲート」の影響で世界線=パラレルワールドという意味で使われるようになっていった [3]。
タイムトラベルとパラレルワールド
タイムトラベルを扱ったフィクションにおいて、タイムパラドックスの解決法としてパラレルワールドが用いられる場合がある。すなわち、タイムトラベルで行き着いた先は実際は現実に酷似したパラレルワールドであり、どの時間軸で歴史を変えようとしても自分がいた元の世界には影響しない。物理学者のデイヴィッド・ドイッチュは、多世界解釈と絡めてパラドックスを解決するモデルを提唱した[4]。
パラレルワールドは実在するのか
パラレルワールドはSFでよく知られた概念であるだけでなく、実際に物理学(量子力学)の世界でも理論的な可能性が語られている。例えば、量子力学の多世界解釈や「ゼロ・ポイント・フィールド」仮説、宇宙論の「ベビーユニバース」仮説などである。
ヒストリーチャンネルの「ザ・ユニバース~宇宙の歴史~#34」などでも取り上げられ、理論物理学者、ミチオ・カクらによって解説されている[5]。
ただし、多世界解釈においては、パラレルワールド(他の世界)を我々が観測することは不可能でありその存在を否定することも肯定することも出来ないことで、懐疑的な意見も存在する[6]。
理論的根拠を超弦理論の複数あるヴァージョンの一つ一つに求める考え方も生まれてきている。現在の宇宙は主に正物質、陽子や電子などで構成されているが、反陽子や陽電子などの反物質の存在が微量確認されている。この物質の不均衡は、ビッグバンによって正物質と反物質がほぼ同数出現し、相互に反応してほとんどの物質は消滅したが、正物質と反物質との間に微妙な量のゆらぎがあり、正物質の方がわずかに多かったため、その残りがこの宇宙を構成する物質となり、そのため現在の既知宇宙はほぼ全ての天体が正物質で構成されているのだと説明されている。ビッグバンの過程において、この宇宙以外にも他の宇宙が無数に泡のごとく生じており、他の並行宇宙では、逆に反物質のみから構成される世界が存在するのではないかという仮説も提示されている。
脚注
- ^ a b 野阿梓「SF、ある幻実世界」 文藝1994年冬号
- ^ ルネッサンス・ジェネレーション '09 「パラレルワールド!」プログラムリポート - 金沢工業大学
- ^ 「世界線」という言葉の語源は何か。なぜ使われるようになったのか。 - レファレンス協同データベース
- ^ タイムパラドックスを回避する方法 - Wired.jp(2010年7月29日).2013年12月15日閲覧。
- ^ 『パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ』(ミチオ・カク著) ISBN 978-4140810866
- ^ 佐藤勝彦『「量子論」を楽しむ本』PHP文庫、2000年4月 ISBN 978-4569573908
関連項目
- 代替宇宙
- フィクションにおけるパラレルワールド
- 多世界解釈
- 可能世界論
- 歴史改変SF - ディストピア(ポリティカル・フィクション)
- 反地球
- 多元宇宙論 - クロスオーバー作品
- 次元 - 異次元 - 1次元 - 4次元
- 異界
- 超常現象 - オカルト
外部リンク
- 現代宇宙論の描くパラレルワールド 佐藤勝彦による解説
並列世界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 14:12 UTC 版)
「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」の記事における「並列世界」の解説
今川は自分たちの暮らす世界を並列した世界と捉えており、様々な可能性により複数の世界に分裂すると考え、分裂の元になる世界を「原世界」、分裂により生じた世界を「従属世界」としたピラミッド型を想定した。並列世界とは、「原世界」から見た「従属世界」のことであり、従って上図の場合は、世界B,C,Dが世界Aの並列世界にあたる。 図にあるA世界からB世界へ移動した場合、元々B世界にいた自分は他の世界へと押し出され、自分同士が同じ世界で鉢会うことはなく、同時にA世界にも別世界から自分がやってくる。その場合、どの世界の自分も能動的に並列世界を移動しているが「運命」によってそれに気付くことはない。 また、下層(従属世界)から上層(原世界)に移動する場合、ひとつの世界で原世界Aへの移動が起こると他の世界でも同様の現象が生じるため、b層の従属世界はすべて消滅する。上層から下層への移動は、従属世界を形成することによってなされる。 従属世界の形成・消滅エネルギーEは拡張アインシュタイン則(4)から導かれる。 E = ∑ j = 1 m M j ( ρ j , ϕ j , H j , t j ) { C j ( ρ j , ϕ j ) } 2 ( 5 ) {\displaystyle E=\sum _{j=1}^{m}M_{j}(\rho _{j},\phi _{j},H_{j},t_{j})\left\{C_{j}(\rho _{j},\phi _{j})\right\}^{2}\quad (5)} m:従属世界の数 Mj:次元等価質量 ρj:事象密度 Φj:事象ポテンシャル(起こりうる事象の数を表す) Hj:次元の保有空間 tj:次元の保有時間 Cj:因果律エネルギー
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