両院制の類型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 05:24 UTC 版)
両院制の代表的な分類では、次のように類型化される。 連邦型(連邦代表型) アメリカ、スイス、ドイツ、オーストラリアなど。 貴族院型(特権階級代表型) イギリス、カナダ、大日本帝国議会など。 民選議院型(民主的第2次院型) イタリア、日本など。 変則民選議院型(一括国政選挙型) 2007年以前のノルウェー。 間接民主型(選挙人団選出型) フランスなど。 この類型は立法府のみに着目した形式的なものであり、行政府との関係も視野に入れると政治制度の区別も重要である。また、同じ制度であってもそれぞれの国の運用は多様である。連邦型であっても、アメリカ合衆国上院は国民による公選制であり、ドイツ連邦参議院は州政府による任命制である。 貴族院型の代表例はイギリスである。イギリスの議会には「選挙の洗礼を受けた上で庶民院(下院)を通過させた法案を、貴族院(上院)は修正はできるが阻止することはできない」とする不文律(ソールズベリー・ドクトリン)がある。この貴族院も今日ではもとからの世襲の貴族である議員は92人に削減され、現在の貴族院議員のほとんどは“一代貴族”(有識者や功労者を貴族院議員にするために一代限りの貴族として認定した者)である。このため、特権階級の代表としての意義は殆どない。戦前日本の帝国議会の貴族院にも、学識経験者などからなる勅選議員がいた。なお、イギリスの貴族院は2009年まで最高裁判所を兼ねており、違憲立法審査権に相当する機能を果たしてきた。類似の制度としては、議会とはみなされていないものの、イランの監督者評議会が挙げられる。 民選議院型のうち日本の国会(参議院)やイタリアの議会(元老院)では、上院議員も直接選挙で選んでいる。両国とも議院内閣制であるが、イタリアでは内閣不信任決議・解散を含め上院と下院が完全に対等である点が異なる。上下院の分裂を避けるためイタリアでは両院同日選挙が慣例となっており、そういった意味では一院制に近いとも言える。 他方でフランスは中央集権的色彩の特に強い単一国家であるが、国会のフランス元老院の位置付けはドイツやアメリカのような連邦型に近い。下院と地方議会の議員約15万人が上院議員を選挙する間接選挙であり、主権民たる国民による直接選挙は行われない。 ノルウェーの議会・立法府(「ストーティング」)は2007年の憲法改正までは国政選挙を一括して行い、選挙後に議員を二院に分ける変則型であった。同じ民選でも日本のような別日に民選選挙が行われる両院制と異なる。上院議員(参議院議員)など全て公選によって人口比で州の代表ら(日本でいう都道府県から人口比)の選出ではなく、両院で国民の代表が選出されるというのは珍しい。イタリアなどでは同日選挙で両院のねじれを防ぐため、必ず両院同日に選挙が行われている。なお、憲法改正後のノルウェー議会は一院制議会となっている。
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