不応期とマルチプル・オーガズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 15:00 UTC 版)
「オーガズム」の記事における「不応期とマルチプル・オーガズム」の解説
女性や、比較的稀ではあるが男性も、不応期(英語版)がないかあっても非常に短く、最初のオーガズムを迎えたすぐ後に第2のオーガズムやさらに多くのオーガズムを経験する場合がある。最初のオーガズムに続く連続した絶頂は刺激が蓄積してゆくにつれさらに強烈もしくは快感の強いものになり得る。一部の女性は、絶頂に達した後では陰核と乳首が非常に敏感になるため、さらなる刺激は最初は苦痛ともなる。女性でもオーガズムが1回きりの人もいる。一度オーガズムに達するとクリトリスに触れるのも嫌になる、というタイプの人である。ペニスやクリトリスといった海綿体でのオーガズムでは、プロラクチン(prolactin:乳腺刺激ホルモン)という物質が放出されることがあり、この血中濃度が高い間は、セックスに対する欲求が急速に減退すると言われている。 連続した複数回のオーガズムを、特に射精することなしに経験したと報告する男性たちもいる。射精しないオーガズム(ドライオーガズム)を経験した男性は、不応期が軽減されるためしばしば複数回のオーガズムを迎えることができる。1回に数時間をかけて自慰を続け、数多くのオーガズムを達成できる男性たちもいる。そうした男性の中には、最初から複数回のオーガズムを得られていた人も、訓練によって習得した人もいる。近年では、複数回のオーガズムを達成するためのさまざまな技法を記した書籍も数多く出版されている。複数回のオーガズムを得られる男性たち(とそのパートナーたち)の大半は、射精をしないことでオーガズム後も通常より遥かに精力的でいられると報告している。さらに、こうした男性たちは望むならば通常よりも強力な射精を伴うオーガズムも得ることが出来ると報告している。 射精直前に陰嚢と肛門のほぼ中間に位置する会陰を圧迫することで射精を防止するのが1つの方法である。しかしながらこれは精液が尿道を通って外部へと射出される代わりに膀胱へと流れ込む逆行性射精をもたらす可能性がある。また、長期間に亘り狭いサドルの自転車に乗り続けた男性の報告例と同様に、会陰の神経と血管を圧迫することにより長期的な損傷を引き起こす可能性もある。何らかの理由で前立腺もしくは膀胱の手術を受けた男性もまた逆行性射精のためにドライオーガズムを経験する場合がある。 複数回のオーガズムを迎えることのできる女性たちは、これを得るためにリラックスして「解放する」必要があることを報告しており、これと似たことを男性が行うのがもう1つの方法である。射精に伴う収縮や、先述のような強制的な抑制を行う代わりに、射精前の血管充血と送出を心身両面でコントロールするのである。こうした技法が成功すると、連続的もしくは複数回の「全身の」オーガズムをも得られる場合がある。前立腺、精嚢、輸精管の指による穏やかな刺激により、激しい放出を伴うオーガズムが持続する性的快感を得ることのできる男性もいる。アネロスやエネマグラなど、前立腺の刺激を主目的とした性具も開発されている。 思春期より前に自慰もしくはその他の性的活動を始めた男性の中には射精を伴わない複数回のオーガズムを得られていたと報告する人も多い。思春期以前の男性のオーガズムは「通常の」女性のオーガズム体験と質的に類似したものであることを示す証拠がいくつかあり、このことは思春期におけるホルモンの変化が男性のオーガズムの特質に強い影響を及ぼしていることを窺わせる。 多数の研究が、プロラクチンというホルモンが男性の不応期の原因と推測されるとしている。このため、カベルゴリン(英語版)(製品名のカバサールやドスティネックスとしても知られる)のようなプロラクチンを抑制する薬品に実験的な関心が向けられている。カベルゴリンに関する事例報告は、この薬品が不応期を完全に取り除くことができ、男性たちに立て続けに射精を伴う複数回のオーガズムを経験させられることを示唆している。少なくとも1つの科学的研究もこうした主張を支持している。カベルゴリンはホルモンに変化をきたす薬品であり、数多くの副作用を持つ可能性がある。性機能不全の治療のための使用はまだ承認されていない。不応期の原因としてもう1つ、オキシトシンというホルモンの放出増加も考えられる。さらに、オキシトシンの増加量は不応期の長さにも影響しているかもしれないと考えられている。 1995年にはラトガース大学で科学的研究が行われ、成人男性における自然な、完全に射精する、複数回のオーガズムの実証に成功している。この研究では、36分間に6回の完全に射精するオーガズムが、不応期と見られるものなしに得られた。思春期が進行し成人期へと続く過程の中で不応期が軽減され、さらには完全になくなってしまう事例もあるようである。後には、P・ハーケらがプロラクチンの亢進反応なしに複数回のオーガズムに達した男性を観察している。
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