一次資料の使用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 15:11 UTC 版)
学問分野としての歴史学は一次資料に基づいており、それらは学者のコミュニティによって評価され、彼らはその発見を書籍、記事、論文として発表する。社会史家のアーサー・マーウィック(英語版)は「一次資料は歴史学において全くもって基礎となるものだ」と述べている。理想的には、歴史学者は研究対象の時代に関わる人々が残した全ての入手可能な一次資料を使うものである。現実には、いくつかの資料は消失したり、研究のために入手できなかったりする。場合によっては、出来事の唯一の目撃譚が、何年も経ってからの回顧録、自叙伝、口頭取材だったりする。遠い昔のある出来事や人物に関する唯一の証拠が、何十年あるいは何世紀も後に書かれたり複製されたものであることもある。昔の原典の拠り所となっている手書きの文書は、複製されたものかもしれないし、複製の断片かもしれない。これは古典学に共通の問題であり、書籍や書簡の要約しか残っていないこともある。一次資料を扱うことの潜在的な難しさにより、学校では通常は二次資料を使って歴史が教えられる。 論文発表を意図して現代史を研究する歴史学者は、入手可能な一次資料にあたるだけでなく、新しい(つまり忘れ去られたり失われた)一次資料を得ようとすることを好む。一次資料は正確であろうとなかろうと、歴史に関する疑問に新たな情報を加えるものであり、殆どの現代史研究は有用な一次資料を見つけるために公文書と専門コレクションを多用することで回っている。歴史に関する研究は、二次資料しか引いていない場合は学問としてまともに取り合って貰えないものであり、それはその研究が独自調査を行なったとはいえないためである。 しかし一次資料(特に20世紀より前のもの)には、潜在的な難しさがあることもある。「実際のところ一次資料は通常、断片的で、曖昧で、分析し解釈するのが非常に困難である。」馴染みのある単語や社会的文脈の、今は使われなくなった語義・意味は、歴史学の初学者が陥る罠の一つである。それゆえ、一次資料の解釈は大学や大学院の専門的な歴史の講義において通常はある程度時間を割いて教えられるが、それに拠らず独学で訓練することも可能である。 一次資料を扱う際の注意点として、次のようなものが挙げられる[誰によって?]。 論調 それが想定している読者・聴衆 発表の意図 作者が立てた仮説 作者の結論の根拠 その主題に関する他の作者に対する作者の賛否 その主題に関する既知の知識に対する一致・不一致 制作された場所(組織的バイアス(英語版))
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