レポ市場
レポ市場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/03 02:19 UTC 版)
「シャドー・バンキング・システム」の記事における「レポ市場」の解説
「レポ取引」(Repurchase agreement)とは、売り/買い戻しの条件付で行う債券売買である。レポ取引で債券を売る場合は、その債券を担保として資金を調達しているのと同じである。逆に、買い手は現金を担保としてその債券を借りているのである(リバース・レポ)。 「レポ市場」は銀行間取引市場と並ぶ短期金融の要である。取引される債券は国債であることが多い。レポ取引は、証券会社が在庫の国債を一時的に他の金融商品へ交換したり、オイルショック以降には国債を空売りしたりする目的でも利用されている。債券を借りている側がその債券を保有していないと、戻しの履行に困ってしまう(フェイル)。 アメリカのレポ市場にはすでに100年にわたる歴史がある。1920年代以降、連邦準備制度はレポ市場を公開市場操作の対象としてきた。連邦準備銀行とレポ市場との関係は、大恐慌と第二次世界大戦によっていったん途切れたが、1951年の「アコード(Accord)」以降から再び復活した。欧州では1973年にドイツ連邦銀行が為替手形を利用したレポ取引を初めて行った。1980年代に入ると、欧州で活動する米国投資銀行によってレポ取引が欧州市場に持ち込まれた。 レポ市場に関する情報や研究は21世紀でなお断片的である。2008年に国際決済銀行が、世界金融危機手前数年間について一定の調査結果を残している。アメリカのプライマリー・ディーラーと銀行持株会社から情報収集した結果、レポ取引の中心は大手投資銀行と大手銀行であることが分かった。アメリカでは前者が総取引の約2/3、後者が1/3を占めている。そして2000年代に入ってから欧州レポ市場の拡張ペースはアメリカのそれを上回っている。 2000年代に(世界の)レポ市場は急激に膨張したが、第一の理由はディーラーとなる銀行がレポ取引を利用することでレバレッジを操作できたからである。同一の担保が平均3回もディーラーの簿外取引として再利用され、シャドー・バンキング・システムの規模を過小評価させてきた。 レポ取引は仲介機関を通さないのが伝統であった。1970年代にソロモン・ブラザーズが、エージェント銀行あるいは清算銀行(クリアリング・バンク)が仲介するトライパーティーという仕組みをレポ市場にもちこんだ。1984-85年にかけて(ジャンク債市場に)発生したブローカー・ディーラーの破綻を契機に、トライパーティー・レポが広まるようになった。マネー・マーケット・ファンドがヘビー・ユーザーとなった。アメリカのトライパーティー・レポは、財務省証券、政府系住宅公社関連証券など、連邦準備銀行の担保適格証券が全体の82.7%を占めている。ユーロ圏のレポ市場では、担保証券の2/3がユーロ参加国が発行する国債である。 近年アメリカのトライパーティー市場では、JPモルガン・チェースとバンク・オブ・ニューヨーク・メロンが清算銀行を担当している。トライパーティー市場については、2010年ニューヨーク連邦準備銀行が調査結果を報告している。この市場は、国内のプライマリー・ディーラーが大口の短期資金を調達するためにもっとも活発に利用する市場で、市場規模はピーク時で2.8兆ドルに達している。リーマン・ショックの後、この市場での資金調達を続けていたのはプライマリー・ディーラーを含めて40社余りであった。その中で上位5社が全取引の57%を占め、上位10社では88%を占めていた。
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