ブロンズの『ダヴィデ像』とは? わかりやすく解説

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ブロンズの『ダヴィデ像』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/27 11:04 UTC 版)

ダヴィデ像 (ドナテッロ)」の記事における「ブロンズの『ダヴィデ像』」の解説

ドナテッロ1440年ごろに制作したブロンズ製の『ダヴィデ像』は、ルネサンス期制作され最初自立するブロンズ彫刻であり、古代ギリシア・ローマ時代以降制作され最初の男裸像として有名な作品である。ダヴィデ謎めいた微笑をうかべ、倒したばかりのゴリアテの首を左脚で踏みつけている。若きダヴィデはほぼ完全な裸体で、身につけているのは月桂樹飾られた兜と長靴、そしてゴリアテから奪い取った剣のみである。 この『ダヴィデ像』はメディチ家依頼制作されたもので、完成後はフィレンツェのメディチ・リカルディ宮殿 (en:Palazzo Medici Riccardi) の中庭中央部置かれた。これはメディチ家が、都市国家フィレンツェ象徴たるダヴィデ後継者自身たちメディチ一族であると自負していたためである。しかしながら国家象徴する英雄の像を自身邸宅設置することは、当時大きな非難浴び可能性があり、ドナテッロはこの彫刻ダヴィデではなく単なる彫刻作品」であると言い逃れするための改変施している。たとえば、ゴリアテとの戦いに望むダヴィデ全裸だったはずだが、この彫刻人物は兜と長靴を身につけていること、足元ゴリアテかぶっている兜には尖った羽飾りがあり、兜の羽飾りギリシア神話ヘルメス特徴付けるとされることなどである。フィレンツェ支配していたメディチ家1494年政変フィレンツェから追放され、『ダヴィデ像』はメディチ・リカルディ宮殿から、ドナテッロ大理石製『ダヴィデ像』が安置されていたヴェッキオ宮殿へと移された。その後17世紀ピッティ宮殿177年ウフィツィ美術館、そして1865年バルジェロ美術館所蔵場所変遷している。 ジョルジョ・ヴァザーリ著書画家・彫刻家・建築家列伝』には、『ダヴィデ像』がメディチ・リカルディ宮殿中庭中央のデジデーリオ・ダ・セッティニャーノデザインした円柱傍ら置かれており、円柱には『ダヴィデ像』が政治的記念碑としていかに重要な意味を持つかという銘が刻まれていたという記述がある。この銘は「勝利祖国守護する者すべてにもたらされる/神が邪悪な敵を打ち砕く/見よ大いなる暴君を妥当した少年を。勝利は民とともに (Victor est quisquis patriam tuetur/Frangit immanis Deus hostis iras/En puer grandem domuit tiramnum/Vincite cives) というものだった。この『ダヴィデ像』に政治的意図があったことは多く研究者認めているが、こめられているであろう正確な意図に関して多く見解があり、定説となっているものはない。 ほとんどの研究者が『ダヴィデ像』の依頼主コジモ・デ・メディチであるとしているが、『ダヴィデ像』の制作年度ははっきりとせず、議論の的となっている。1420年代から1460年代まで様々な説があり、そのなかで主流となっているのは、ミケロッツォ・ディ・バルトロメオ設計したメディチ・リカルディ宮殿建築され1440年代とする説である。図像学観点からすると、このブロンズ製『ダヴィデ像』は大理石製『ダヴィデ像』の延長線上にある若き英雄ダヴィデ片手に剣を持ってたたずみ、その足元に刎ねゴリアテの首が転がっている。しかしながら外観としては二つの『ダヴィデ像』は全くの別物である。ブロンズ製の『ダヴィデ像』は兜と長靴以外全裸で、ひどく華奢な体つきをしており男性的な印象はまった与えない頭部表現古代ローマ皇帝ハドリアヌス寵愛し彫刻家アンティノウス影響受けているといわれている。メアリー・マッカーシーが「服装倒錯であり、性的倒錯者魅了する両性具有」と呼んだダヴィデ身体は、ゴリアテ巨大な剣と対照的に肉体表現することによって、ダヴィデゴリアテ打ち負かしたのは身体的能力ではなくすべて神の意思であるということ表し重武装巨人ゴリアテとは対極である全裸少年ダヴィデ神の存在をさらに明確にしているのであるまた、この彫刻ダヴィデにはユダヤ教徒であれば通例であるはずの割礼なされていないが、これはルネサンス期イタリアで制作され男性裸像モチーフとした美術品共通する特徴である。

※この「ブロンズの『ダヴィデ像』」の解説は、「ダヴィデ像 (ドナテッロ)」の解説の一部です。
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