シングルポイントインジェクション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/05 09:50 UTC 版)
「燃料噴射装置」の記事における「シングルポイントインジェクション」の解説
シリンダーごとではなく、全シリンダーに対して一括して一箇所(1個ないし2個)のインジェクターで燃料を供給する方式。SiやSPIなどと省略される。低圧燃料噴射装置とも呼ばれる。 燃料を噴射するインジェクターと、撹拌し均一性の高い混合気にするミキサー、それらを収めるハウジングからなる。 キャブレター方式のエンジンにも最小限の設計変更で搭載が可能で、吸気抵抗の低減、古い設計のエンジンの電子制御化などが比較的ローコストで実現できる。インジェクター総数が1本ないし2本程度で済むため、MPI形式に比べてインジェクター不良によるエンジン始動不能の確率が相対的に低くなることや、インジェクター不良による各気筒への噴射量のバラツキに起因するエンジントラブルが起こらないというメリットがある。しかし相対的な性能ではMPIのポート噴射式インジェクターには及ばない。 航空機用としては日本では中島飛行機が「栄」や「誉」の末期型用に開発した。しかし、空冷星型エンジンの各シリンダーに均一な混合気を均一な圧力で供給することが難しく、改良も進められたが、実用化とほぼ同時に終戦を迎え、実績はほとんど挙げていない。 自動車用では、日本車での採用例はトヨタのCi(採用エンジン例:1S-iLU・4S-Fi)、日産のEi(採用エンジン例:CA18i・GA16i・SR18Di・VG30i)、また中島飛行機の後身である富士重工が1,800ccエンジンのレオーネ・EA82系アルシオーネ・EJ18系レガシィの初期にSPFIと称して採用したほか、軽自動車用のスバル・EN型エンジンで採用した。 これらのメーカーは燃料噴射装置付きエンジンの中でも比較的低廉なグレードのものにSPIを採用していたが、三菱のECI(採用エンジン例:G63B、G54B、G32B等の縦置きエンジン)は、各ポート噴射式のMPI(ECI-MULTI)を本格的に採用するまでの間は、ターボエンジンなどの上級グレードの車種にも積極的にSPIを搭載していた。三菱のSPIはスロットルボディの前に配置された2本の大容量インジェクターがスロットルに向けて集中的に燃料を噴射する独自の形式で、WRCに参戦する車両(ランサーEX、スタリオン)のエンジンにも市販車と同じ構造のSPIを使用し、多数の実績を収めている。こうしたSPIの中で一番の成功例はホンダの第1期F1用エンジンであろう(1964年 - 1968年にかけて2勝を記録)。日本国外のメーカーで、日本での馴染みの深い車種としてはイギリス・ローバー製のミニがその末期で採用した。 アメリカでは古いエンジン用に、キャブレターをインジェクションに変更するレトロフィットキットが現在でも市販されている。
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