シカの頭数管理問題について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 08:46 UTC 版)
シカの生息数増加に伴い、餌の不足から島内で様々な被害が報告されるようになった。早くも1998年には旧宮島町が「宮島町シカ対策協議会」を設立して、この時点でシカを野生復帰させる方針を決定している。2000年頃の被害としては「植物の樹皮や新芽がシカにかじられる」「雄のシカが樹齢の若い樹で角をとぐために枯死する」といったものが主であったが、やがてシカが観光客の持っている飲食物を狙って観光客がケガをするなどの被害が報じられた。被害の原因は議論があり確定的ではない。観光客や住民からの苦情をうけて、地元廿日市市は2008年9月に『宮島地域シカ保護管理ガイドライン』(PDF)を策定し、シカを野生状態に戻すために餌やりを禁止するとともに栄養状態の悪いシカを保護・手当てした後に山に帰すなどの管理を実施している。 この管理対策により2012年8月までに宮島島内の市街地沿岸でシカが半減したという。市側は餌やり禁止により生息地を分散させる取り組みに一定の成果が出ているとしている。 この対策はマスコミで取り上げられたこともあって、全国から意見が寄せられた。 そもそも1日3キログラムの餌が必要な鹿には人の与える餌では足りない。餌やり禁止以前は鹿煎餅販売店は一つしかなく、全体の餌量に影響していたとは考えにくい。現在も市街地への依存が強い鹿も、夜は山に帰り、普段から自分で餌を採取している。廿日市市は餌やり禁止当初に芝生を造成し、鹿が飢えないようにサポートしたが、逆に個体数増加が考えられるので、今は増やしていないなど、対応が必ずしも一貫していない。また、市では餓死した個体は発見されていないとしているが、より学術的な検証は必要であろう。そもそも、純然たる野生状態においても春先には飢えによる衰弱死は確認されるのであり、仮に餓死した個体が発見されたとしても評価には議論が必要である。餌やり禁止以降も個体数、繁殖率共に高い数字を維持し、全国のニホンジカの平均寿命を上回る9歳、10歳での出産が多く見られることが報告されている。 頭数管理の方法として避妊を求める声があるが、鹿自身への悪影響や避妊去勢により、分泌物が変化した場合の島の植物への悪影響が考えられ、専門家は否定的である。また、もう一つの保護地域の奈良も、野生動物への避妊は効果が見込めないとしている。 現在も餌やりの即時全面中止の方針に反対するボランティアが入島して餌やりを続けているなど、問題は依然として継続しており、より学術的な調査と論点整理を踏まえた根本的解決を模索する動きが続けられている。
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