インスリン療法での注意点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/09 21:08 UTC 版)
「インスリン製剤」の記事における「インスリン療法での注意点」の解説
全ての加療で言える事であるが、自然治癒でない加療である以上は性状に合わせたコントロールを外れると副作用が発生するリスクがある。殊にインスリン療法は全身性の血中処方であり個人でのコントロールでの難しさから絶対的適応例では入院による導入が望ましいといわれている。現行では、相対的適応例におけるインスリン療法の開始や経口血糖降下薬からの切り替えの場合は外来で行い、インスリン量の調節の為外来を頻回にする事で対処する事が多い。外来での導入に関しての危険性を評価するには、 ケトーシスがない事 感染症や悪性腫瘍といった高血糖の原因となる他の疾患が存在しない事 糖尿病網膜症(特に福田分類でBとなるもの)、腎機能低下といった進行した糖尿病慢性合併症が存在しない事 食事療法、インスリン注射、血糖自己測定といった自己管理能力がある事 を確認する事が望ましい。これらに該当するようならば糖尿病専門医がいる施設や教育入院を用いないと外来でのコントロールは危険である。 インスリン療法では注意するべき事がいくつかある。インスリンの皮下注射を自分で行う事、血糖自己測定(SMBG)ができる事、シックディの対応、低血糖になった際の対応といった問題を克服する必要がある。入院中は看護師の管理によって教育が不十分でも管理可能だが、退院前にこれらができないと事故につながりかねない。 特に気をつけるのは低血糖である。低血糖発作は初期ならばブドウ糖を摂取する事で改善できるが、低血糖になったからという事で次の投与のインスリンを自己判断で止める場合が多い。低血糖が起こった場合は責任インスリンの量を調節し、再発を予防する。 インスリンの調節中、「ソモジー効果」という現象に出会う事がある。これはインスリン量が過剰である為に低血糖が起こり、その反動としてインスリン以外のホルモンが分泌される事で血糖値が上昇する(血糖値を下げるホルモンはインスリン以外存在しない)。早朝に高血糖となる事が多い。インスリンを増量すると重篤な低血糖発作が発生する。夜中に高血糖発作が起こる前の時間の血糖値を測定すれば判明する。このころに低血糖になっていれば、それはソモジー効果である可能性が高い。 インスリン療法を開始すると膵機能が回復してくる事がある。この目安はインスリン必要量の低下によって判断する。この場合はインスリン療法を中止できる事もある。 αGIのような経口血糖降下薬の中にはインスリンと併用できるものもある。SU剤で二次無効となった時、内服薬を中止せずに就寝前にNを投与する事で糖毒性が解除され、SU薬の効果が再び現れる事もある。
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