イスナード研究とは? わかりやすく解説

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イスナード(伝承経路)研究

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 15:06 UTC 版)

ハディース批判」の記事における「イスナード(伝承経路研究」の解説

レザー・アスランは「伝承の時代が下るにつれ、イスナードはより完璧となる」と言ったシャハト格言引用し、それについて「恣意的だが正確だ」と語っている。 ハディース研究専門としたイスラム学者G.H.A. Juynbollによれば、「イスナードという制度そのものは、預言者死後およそ4分の3世紀後に誕生したとのことで、それ以前ハディースや「キサス(主に伝説的な物語)」が無造作に、しかもほとんどが匿名伝えられていた。イスナードが登場してからは、その規定上必要とされた場合には、古い権威者の名前が付与された。よく知られ歴史上の人物の名前が選ばれることもあったが、それ以上に、不完全なイスナードの中の名前を埋めるために、架空の人物名作られることも多かった。」 パトリシア・クローネも同じ意見で、初期伝統ハディース学者らは、彼ら自身歴史的に一次資料近かったにもかかわらず、後の基準では大雑把で不十分となるハディース伝承経路(イスナード)詳述習慣発展させることに腐心していたと指摘している。後世ハディース非の打ち所のないイスナードを完成させていたものの、それは既に捏造されている可能性高かった。彼女は、真正ハディース捏造がいつから始まったかわからないので、真正ハディースの「核心」を絞り込むことはできない主張している。 ブハーリー(870没)は預言者まつわる60件の伝承審査したと言われるが、彼は約7,000件(繰り返しを含む)を保存し言い換えると約593,000件を捏造として廃棄した。もし約3件(繰り返しを含む)の伝承収録されているハディース集を持つイブン・ハンバル(855没)が同じ基準伝承数を審査した仮定した場合、彼は約57件の伝承廃棄したことになる。イブン・ハンバル伝承のうち、ムハンマドの教友であるイブン・アッバース(687没)が伝えた伝承は1,710件(繰り返しを含む)である。しかし、その50年前に、ある学者はイブン・アッバースが預言者から聞いた伝承は9件であると推定し別の学者10ではないか考えていた。イブン・アッバースが預言者から聞いた伝承が、西暦800年頃で10件、850年前後で1,000件を超えていたとしたら、西暦700年や(ムハンマド逝去時の)632年当時には何件の伝承聞いていたのだろうか。仮に、イブン・アッバースが聞いた10件の伝承本物であると認めたとしても、1,710件の伝承の中からどのようにしてそれを特定するのかという疑問も残る。 ジョセフ・シャハトは、「伝承技術的な批判は、主にイスナードの批判基づいている」と述べている。イスナードは、時間の経過無視して増大逆行横方向への広がり」があったため、不正なハディース排除するには効果的ではないと彼(および他の人々)は考えている。 本文検証無視され、主に伝承経路確立注がれていた知的努力 ハディース批判者たちは、伝統的ハディース学者らによるイスナード検証方法問題点だけでなく、ムハンマドによる言行承認伝えることを目的とする、ハディース本質部分である本文(matn)の評価についても、不足点を指摘する伝統派イスラム学者によるハディース研究重大な弱点は、ハディース趣旨本文(matn)が「意味をなしているか、論理的であるか」を検証できなかったことだと主張する。matnは「実質的に神の啓示であり、いかなる形式法的・歴史批判受け入れ不可能」であると考えられてきたからである。N. Coulsonは「ムスリム学者たちはハディース捏造可能性認識していたが、その真偽検証伝承者伝承経路注意深く調べることに限られていた」と指摘する。その連鎖途切れることなく個々繋がり信頼できる人物であれば、そのハディース拘束力のある法源として受け入れられたのだ。ハディース内容については、前述のような信仰上の観点から、一切疑問を抱くことは許されなかった。 シャハトは、預言者からのハディース疑問推論なしに受け入れられなければならない主張するシャフィイーを引用する。「もしある伝承預言者由来する認証されたならば、それに従わなければならない。誰であれ、それに対しなぜ、どのように、と問うことは間違いである。」 また、ゴルトツィーエル・イグナーツは「内容価値判断するには、イスナードの正しさ判断する必要があるムスリム批評家は、最も粗雑な時代錯誤であっても、そのイスナードが正しということであれば、何とも思わないようだ。伝承は、その外見的な形態についてのみ審査されている」と、イスナードを批判したヨーロッパや非ムスリム学者たちは、この伝統的なタイプ批評では不十分だ考えたハディースは、その内容と、その用語が法体系制度発展において占め位置によって検証されるべきである。 伝承者対す人物評「ʿilm al-rijāl」 イスナードに対すもう一つ批判は、伝承者語り手道徳的精神的能力評価するʿilm al-rijāl(人物評)として知られる伝統的なハディース研究分野有効性対するものであった。ジョン・ワンズブロウは、「内部矛盾匿名性恣意性」を理由に、イスナードを受け入れるべきではないと主張している。具体的には、人物評記載されている以外の多くハディース伝承者に関する情報存在しないため、それらが「偽史投影」、すなわち後世の伝承者によって作り出された名前であるかどうか疑問視されているのである

※この「イスナード(伝承経路)研究」の解説は、「ハディース批判」の解説の一部です。
「イスナード(伝承経路)研究」を含む「ハディース批判」の記事については、「ハディース批判」の概要を参照ください。

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