アイソトープ(放射性ヨード)内用療法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 07:47 UTC 版)
「バセドウ病」の記事における「アイソトープ(放射性ヨード)内用療法」の解説
放射線治療の一種であり、非密封小線源治療に分類される。外来治療が可能であり、簡便性の面で優れている。甲状腺にヨードがほぼ特異的に集積する性質を利用し、ヨードの放射性同位元素(ラジオアイソトープ; radio isotope; RI) "131I" を内用することで、甲状腺に集積した放射性ヨードから出るβ線によって、甲状腺細胞の一部を死滅させ細胞の数を減らす方法。 甲状腺細胞数を減少させ、産生・分泌される甲状腺ホルモンの量が減ることで治療効果を発現する。治療効果に即効性はなく、およそ2 - 6か月で甲状腺ホルモンの量が減少すると言われ、手術に比べ患者への総合的な負担が少なく、抗甲状腺薬より早く治る(註:症状軽減ではなく、原因治療による治癒を指す)のが、この治療法の長所である。 ただし、放射性ヨードの最適量を算出する方法が存在せず、経験的に甲状腺機能の亢進をほぼ確実に是正できる量を、患者個人の因子を考慮せず、一律に投薬するため、時間経過とともに細胞が減りすぎて、逆に甲状腺の機能低下が発生することもある。なお、治療に寄与するのは、飛程の短いβ線であるが、131Iは同時にγ線を放出するため、患者の体外であっても、患者近傍では放射線の被曝を生じる。 放射性物質を用いるので、被曝の影響が全くないとはいえず、妊娠中や授乳中の女性および、すぐに妊娠を希望する女性などには行なわない。放射線の影響は約4か月でなくなるとされることから、4か月で妊娠を許可している施設もあるが、甲状腺機能の変動があるため、全身状態を考慮すると、1年は待つべきとされる。 ヨード内用療法は施行する際に、前処置が必要である。と言うのも、非放射性同位元素のヨードが体内に大量(または通常量であっても)にあると、体内の全ヨード中の放射性ヨードの占める割合が著しく低下する。こうした状態では、ヨードは無作為に甲状腺に取り込まれることから、確率的に甲状腺に取り込まれる放射性ヨードが治療量に達しない恐れがあるため、前処置としてヨード制限を行なう。 西欧諸国では、食物中に含まれるヨード量が少ないため、ヨード制限はヨードが含有していることが明らかな食品を避けることで、比較的容易に制限することが可能である。日本で普及している食品(外食も含め)には、昆布だしを使用しているなどにより、非明示的にヨードが含まれているものも多く、医師により摂取可能な食品の指導を受け、食事に対し十分な注意を払う必要がある。 その一環で、治療前に造影CTで一般に用いられるヨード系造影剤の使用も避けるのが原則であるが、無機ヨードが甲状腺へ取り込まれる量は僅少であり、実臨床では治療前に造影検査を行なっていても、ヨード内用療法の効果に与える影響は、無視できる程度である。 RI治療により、バセドウ眼症(甲状腺眼症)が悪化することもある。眼症を持つ患者のRI治療の適応は、ヨード内用療法以外の治療法も視野に入れ、慎重に判断する必要がある。また眼症増悪の際には、プレドニゾロン投与、またはステロイドパルスとX線による球後照射の併用が施行される。 13mCi投与により、ややover-burnとすることが多い。
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