ろば
『黄金のろば』(アプレイウス)第3巻 ルキウスは、寄宿先のミロオ家の女主人が身体に膏油を塗ってみみずくに変身する有様をのぞき見る。小間使いのフォーティスに膏油を盗ませ、自分も塗ってみると、ルキウスはろばになり、そのためさまざまな苦労をする〔*物語の最後にはルキウスは人間にもどる〕。
★2a.人間をろばにするキャベツ、ろばを人間に戻すキャベツ。
『キャベツろば』(グリム)KHM122 腹をすかした狩人が、野菜畑でキャベツを食べると、ろばになってしまった。かりゅうどは驚くが、ろばとなった身にキャベツは美味なので食べ続ける。そのうち種類の異なるキャベツを食べて、かりゅうどはもとの人間にもどった。このキャベツを用いて、かりゅうどは悪い魔女をろばにしてしまう。魔女の美しい娘にもキャベツを食べさせ、いったんろばにした後にまた人間に戻してやり、かりゅうどは娘と結婚する。
*人間を馬にする草、馬を人間にもどす草→〔馬〕9aの『宝物集』(七巻本)巻1。
★2b.人間をろばにする焼餅、ろばを人間に戻してくれる老人。
『河東記』(唐・作者不詳)「板橋の三娘子」 板橋店という村に、三娘子という三十女がいた。多くの旅人が三娘子の家に宿をとり、彼女の作った焼餅(シャオピン)を食べて、驢馬にされてしまった。趙季和という男が、計略を用いて焼餅を三娘子に食べさせ、三娘子自身を驢馬に変える。趙季和はその驢馬に乗って、諸国を巡る。4年たったある日、老人が現れて、「三娘子よ、どうしてそんなざまをしているのだ」と笑い、驢馬の口に両手をかけて、2つに引き裂く。中から三娘子が躍り出て、どこかへ逃げ去った。
『子不語』巻19-520 ある高官の長子は凶暴な性格で、使用人を何人も責め殺した。この男は病死した後、家奴の夢に現れて、「残酷な所業の罰として、俺は牝驢馬の腹の中に入れられることになった」と告げた。男は驢馬の仔となって生まれ、家の者たちをよく知っているようなそぶりを示した。「旦那様」と呼べば、跳びはねて側に寄って来た。
*→〔ろば〕5の『酉陽雑俎』巻15-585。
『聊斎志異』巻2-79「イ水狐」 イ県(山東省)の李氏が持つ別荘を、1人の老翁が借りた。老翁は「自分は狐だ」と言ったので、県内の縉紳が彼に大きな関心を寄せ、競って交誼を結んだ。ところが老翁は、府知事との交際だけは断った。李氏が理由を問うと、老翁は言った。「あいつの前生はろばで、人に生まれた今でも貪欲な性質だ。あんな奴とつきあうのは恥だ」。
★4.人間がろばを産む。
『ろばの若さま』(グリム)KHM144 王と妃の間に、ろばの子供が生まれた。ろばは成長後、旅に出て、他国の王の姫の婿となる。夜、婿はろばの皮をぬいで美しい若者に変身し、姫は喜ぶ。朝が来ると、婿はろばの皮をかぶる。これを知った姫の父王は、夜のうちに、ろばの皮を燃やしてしまう。婿はそれからはずっと人間の姿で、姫と暮らした。
★5.ろばがしゃべる。
『民数記』第22章 バラムがろばに乗って道を行く。主(しゅ)の御(み)使いが、剣を手にして立ちふさがる。それを見たろばは道をそれ、バラムを乗せたままうずくまる。バラムの目には御使いが見えなかったので、バラムは怒って、杖で3度ろばを打つ。主がろばの口を開き、ろばは「わたしがあなたに何をしたというのですか。3度もわたしを打つとは」と抗議する。この時、主はバラムの目を開き、バラムは御使いを見てひれ伏した。
『酉陽雑俎』巻15-585 東市の男が驢馬に乗って、亡父の葬式の道具を買いに出かける。驢馬が話しかけてきて、「わしは白元通という者だ。君の家からの借りは、もう充分に返したから、2度と乗らないでくれ。南市の某家に、わしは銭5千4百の貸しがある。わしが君から借りている銭も、それと同じぐらいだ。わしを売りなさい」と言う。男は南市で驢馬を売って、銭5千4百を得る。驢馬は、2日たつと死んでしまった。
★6.ろばと交わる男。
『イソップ寓話集』(岩波文庫版)386「愚かな娘」 愚かな娘を持つ母親が、「娘に分別がつきますように」と、神々に祈った。ある日、娘は畠に出て、男が驢馬と交わっているのを見る。娘が「何をしているの?」と尋ねると、男は「こいつに分別を仕込んでいるのさ」と答える。愚かな娘は「私にも分別を仕込んでよ」と請い、男は娘の処女を奪った。
★7.ろばに乗る人。
『マルコによる福音書』第11章 イエスが2人の弟子に、「向こうの村へ行きなさい。村に入るとすぐ、まだ誰も乗ったことのない子ろばのつないであるのが見つかる。それをほどいて、連れて来なさい」と命じる。イエスはそのろばに乗って、エルサレムに入る〔*『ルカ』第19章に同記事。『マタイ』第21章では、ろばと子ろばを引いて来るよう命じる。『ヨハネ』第12章では、イエスがろばの子を見つけて乗る〕。
*ろばに乗る女神→〔犠牲〕4dの『聊斎志異』巻4-138「柳秀才」。
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