待ち行列のコンピュータへの応用とは? わかりやすく解説

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待ち行列のコンピュータへの応用

読み方まちぎょうれつのこんぴゅーたへのおうよう
【英】:applications of queueing theory to computer systems

概要

複雑で大規模なコンピュータシステムでは, 性質異な様々な処理要求非同期発生するため, システム内部資源競合発生し混雑している. この混雑現象モデル化解析を行うことによりコンピュータシステム性能評価し, 過不足のない最適なシステム設計, 性能トラブル起こさないシステム開発など的確に推進するために, 待ち行列理論待ち行列ネットワークモデル活用されている.

詳説

セントラルサーバモデル 大規模なコンピュータシステムでは, 多数利用者から性質異な様々な処理が非同期要求されるため, その内部では CPU始めとする種々のシステム資源競合発生する. すなわち, コンピュータ内部混雑しているのである. この混雑現象解析し, その結果システムの設計開発利用するため, 待ち行列理論, とりわけ待ち行列ネットワークモデルがよく利用される. 閉鎖型ジャクソンネットワーク利用したセントラルサーバモデルとその計算アルゴリズム [7]が最も簡単な待ち行列ネットワークモデルとして知られている. 待ち行列のコンピュータへの応用


BCMPネットワーク BCMPネットワークは, 複数異なる網内移動経路 (経路選択確率行列) をもつ客が混在することが許されるため, それぞれの網内移動経路性格異なサブシステム対応付けることにより, 複雑で大規模なコンピュータシステム性能評価モデル柔軟に構成することができる. 待ち行列ネットワーク実用化するに際しては, 正規化定数効率的な計算方法開発, 積形式解もたないようなモデルに関する近似解法開発, 利用者分かりやすく使いやすいインターフェィスをもつソフトウエアパッケージの開発等が欠かせないが, 1975年BCMP ネットワークに関する積形式解 [1] が発表されるとともに, その正規化定数計算法提案 [9], ならびにそのアルゴリズム実装したソフトウエアパッケージの開発が行われた. それを契機に, BCMP ネットワークに関する研究応用大きな進展をみせた. とりわけ, 開放型ネットワーク閉鎖型ネットワーク混在する混合型待ち行列ネットワークは現在広く実用に供されている.


待ち行列ネットワーク計算法 積形式解をもつ待ち行列ネットワーク利用する際には, ネットワーク状態分布の正規化定数といわれる定数計算することが必要になる. この正規化定数は, 確率条件から定められるのであるが, ネットワーク構成するノード数, 網内移動経路数 (部分連鎖数) , 閉鎖型連鎖にしたがう客数等大きくなるしたがい, その計算量組み合わせ的な速さ増大する. そのため, 待ち行列ネットワークに関する効率的な計算法開発実用化のためには欠かせない. この計算法は, 大きく分けると, たたみ込み法系統属するものと, MVA (Mean Value Analysis) 法 [10]の系統属するものに分けることができる. たたみ込み法では, 正規化定数たたみ込み演算利用して直接求める. MVA 法では, ネットワーク積形式解から連鎖と客数をパラメータとする漸化式をつくり, これを手がかりにして計算を行う. たたみ込み法では, 指数部のあふれ, MVA 法では仮数部の桁落ち, という数値計算上の安定要因をもっているため, それを避け計算法についての研究多数なされている. 実際に待ち行列ネットワーク利用する際には, これらの計算アルゴリズム実装したソフトウエアパッケージが必要になる. コンピュータシステムへの応用目的とした開発も QM-X [7] をはじめ多数行われている.


性能測定技術 待ち行列ネットワーク利用してコンピュータシステム性能評価を行う際には, 評価の基礎となるデータどのようにして得るのか, という問題が重要となる. 質の良いデータ効率的に測定するための技術色々と開発されている. また, 待ち行列ネットワーク効果的に利用するための方法論測定法提案なされている. これらについては, 解説 [5, 6] に示される. また, 待ち行列ネットワークとそのコンピュータシステム性能評価への応用については, [3, 4, 7, 9] に詳しい.



参考文献

[1] F. Baskett, K. M. Chandy, R. R. Muntz and F. G. Palacios, "Open, Closed, and Mixed Networks of Queues with Different Classes of Customers," Journal of Association of Computing Machinery, 22 (1975), 248-260.

[2] J. P. Buzen, "Computatonal Algorithm for Closed Queueing Networks with Exponential Servers," Communication of Association for Computing Machinery, 16 (1973), 527-531.

[3] 亀田壽夫, 紀 一誠, 頡, 『性能評価の基礎と応用』, 共立出版, 1998.

[4] K. Kant, Introduction to Computer Performance Evaluation, McGraw-Hill, Inc., 1992.

[5] 紀 一誠, 「情報処理システム性能評価(1)(2)(3)」, 『オペレーションズ・リサーチ』, 40 (1995), 315-320, 370--375, 431-436.

[6] 紀 一誠, 「コンピュータシステム」, 『オペレーションズ・リサーチ』, 43 (1998), 562-567.

[7] 紀 一誠, 『待ち行列ネットワーク』,朝倉書店 , 2002.

[8] 紀 一誠, 納富研造, 「待ち行列網モデルによる計算機システムの性能評価用ソフトウエアパッケージ QM-X」, 『情報処理学会論文誌』, 25 (1984), 570-578.

[9] S. S. Lavenvarg (Ed. ), Computer Performance Handbook, Academic Press, 1983.

[10] M. Reiser and H. Kobasyashi, "Queueing Networks with Multiple Closed Chains: Theory and Computational Algorithms," IBM Research and Development, 19 (1975), 283-249.

[11] M. Reiser and S. S. Lavenverg, "Mean Value Analysis of Closed Multichain Queueing Networks," Journal of Association for Computing Machinery, 22 (1980), 313-333.




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