比較
他と対照し、異なっている部分やその差異の程度などを見定めること、という意味で用いられる表現。基本的には名詞だが「比較する」の形で動詞(サ変動詞)としてもよく用いられる。
「比較」の語を構成する「比」の字も「較」の字も、共に「くらべる」と訓ずる。つまり類義語が並置された形の熟語である。その意味は「比べる」(較べる)と何ら変わらない。
比較の語は、文語表現というわけではないが、漢語が多く用いられる硬めの文章で用いられやすい。他方、やや口語的なくだけた文においては「比べる」の方が好まれやすいといいえる。例えば、「両者を比較した結果、意外な事実が判明した」というような文調では「比較」が、「二つを比べてみると驚くべきことが分かった」というような口調では「比べる」が用いられやすい。
他の熟語と組み合わせて「比較対照」「比較検討」のような表現が作られる場合も少なくない。また、「的」を接尾辞的に添えて「比較的」というと副詞となる。この場合、具体的な比較対称が特に念頭に置かれず漠然と「同種の他のものと比べてみて」程度の意味合いで用いられることが多い。
「比較」と同じく「比べる」の意味で用いられる漢語表現としては「对比」「対照」「比量」なども挙げられる。
「対比」は、2つの物事を比べ、もっぱら相違点に着目する(違いを浮き彫りにして際立たせる)という意味合いにおいて用いられる。「比較」は3つ以上の物事を並べて比べる場合にも用いられる場合があり、また相違に限らず類似または一致する部分にも着目する意味で用いられる場合がある。
―― 定時制高校や通信制高校などと対比される文脈では「全日制高校」という呼び方が用いられるが、そうでなければ単に「高校」と呼ばれる。
―― 欧米と対比すると、日本の商習慣には非合理的な因習も多いと分かる
―― 世にはばかる悪人と清貧な善人とが対比的に描かれている
―― 明と暗の対比(コントラスト)を用いた劇的演出こそがカラヴァッジョに代表されるバロック絵画の真骨頂といえる
「対照」は互いに並べて照らし合わせる、見比べる、といった意味合いの語であり、「比較」に近い意味合いでも「対比」に近い意味合いでも用いられ得る。ただし「対照的」と述べる場合にはもっぱら「違いがはっきりと際立つ」という意味で用いられる。
「比量」は「比較」と同様「比べる」(比べ量る)という意味の語であるが、もともと仏教における用語であり、現代においては用いられる機会は稀といえる。
なお「比較」は「ひこう」と読むこともあり「比校」と書くこともある。元をたどれば「ひこう」の方が根本に近い読み方であり、「ひかく」は慣用読みである。とはいえ今日では完全に「ひかく」の読みが定着しており「ひこう」の読みは廃れている。
ひかく
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