その後の批評
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 02:32 UTC 版)
Christenhusz et al. (2018)では、最近のシダ植物の分類はジェネラリストとスペシャリストの間で意見の食い違いがあり、論争の的になっていると述べた。そこで彼らは、PPG I分類体系はAPG IVのようにコミュニティにより作られたにも拘らず、APGの手法とは異なり、同定が難しい多くの属に細分化しすぎたと論じた。そしてそのような細分化された属は、種を同定してから分子系統解析による結果のみにより認識できるため、属の階級としての意味をほとんど果たさないと主張した。 その後、PPG I (2016)の運営メンバーを含むSchuettpelz et al. (2018)では、PPG I (2016)分類体系で認められた属の数は、多すぎではなく歴史的な過程を引き継いでおり、むしろまだ少ないと主張した。Christenhusz et al. (2018)に反論し、「最近のシダ植物の分類が論争の的になっている」というのはあくまでその著者らのみが問題としているのであって、Smith et al. (2006)から始まったシダ類の分類は着実に合意に向かって進んでおり、PPG I (2016)はあくまで国際的なシダ植物学者たちのコンセンサスを明示したに過ぎないとした。Christenhusz & Chase (2014)とChristenhusz et al. (2018)では、308種がGrammitis Sw.に、468種がHemionitis L. に、388種がThelypteris Schmidel に移され、これらの1164種の移動だけで、シダ種の11%に新しい学名が付けられた。Schuettpelz et al. (2018)はこの濫造を「1世紀以上にわたる知的進歩をほとんど無視している」と表現し批判した。学名の出発点であるカール・フォン・リンネ (1753年) の『植物種誌』以降、小葉植物と大葉シダ植物の種数は短期間的には逆転することがあるもののほぼ毎年増加しており、これは(自然界から)蒐集された標本の数が増え続けているためだと考えられる。そして種数の増加に加え、シダ植物以外の分類群では種に対する属の割合がもっと低いことを指摘し、Christenhusz et al. (2018)のように属を広い概念として扱うことは「足並みを乱している (out of step)」と主張した。分類には様々な目的があって何れも主観的であるが、系統学に基づいてより精密なレベルの系統関係を反映し、利用可能なデータと分類学的見解を総合した分類体系は、ジェネラリストにもスペシャリストにも最も役立つというのが、ほとんどの分類学者の意見であるとしている。 それに対し、Christenhusz & Chase (2018) は改めて、多くの属に細分化しすぎであるとしてPPG I (2016)に対する批判的な論文を発表した。そして、Schuettpelz et al. (2018)がChristenhusz & Chase (2014)を「足並みを乱している」と批判したことに対し、反論した。Christenhusz & Chase (2018)では、「Schuettpelz et al. (2018)の主張は、PPG I (2016)の支持者が批判者を反知性的だと思わせて黙らせようとしているに過ぎず、属の数が多いことが“知的進歩”と等しいと演繹的に仮定したでっち上げである」と厳しく批判した。そして、Christenhusz et al. (2017)の24科212属の安定的な分類体系と、PPG I (2016)の今後変化があるだろう不必要に複雑な51科337属の分類体系では、どちらがより多く利用されるかは時間が解決してくれるだろうとした。PPG I (2016)による単系統である属の分割は「系統情報をより反映するため」望ましいというメッセージを与えているため、そのような考えでは分類の激変は大きな属がなくなるまで終わらないとし、その不安定さゆえ、シダ植物の分類体系においてPPG I (2016)を論理的な次の段階として必要であると自動的にみなすべきでないと締めくくった。 またヒメシダ科 Thelypteridaceaeについては、特に日本の種に関して、PPG I (2016)の30属を認めると、雑種属 × Chrinephrium を認める必要がでてきたり、He & Zhang (2012) やAlmeida et al. (2016) の系統解析で用いられた中国産 "Parathelypteris nipponica" の材料は同定が疑わしいためかつて Parathelypteris に含まれていた種の所属が不確かであったりするなど問題点が多いことが指摘されている。そのため、今後予定されている "PPG II" で東アジアの資料を正確に同定して公表することが重要であるとされる。
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