ジェネラリストとスペシャリストとは? わかりやすく解説

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ジェネラリストとスペシャリスト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/22 08:57 UTC 版)

ジェネラリストとスペシャリスト(英:generalist and specialist species)は、生物の生存戦略の二分法。ジェネラリストは多様な環境条件でうまく生育・繁栄でき、さまざまな資源を利用できる(例:多様な餌をとる従属栄養生物)。スペシャリストは、限られた環境条件でのみ繁栄できるか、限られた食性をもつ。

もっとも、多くの生物はこの二分法にきれいに収まるわけではない。高度に特化した種(極端な例は単食性で、特定の一種類の餌しか食べない)もあれば、特化の度合いが低いもの、多様な環境に耐えられるものもある。言い換えれば、強い特化から広い汎用化まで連続体が存在する。

説明

アライグマのようなジェネラリストは、都市環境や人為的に改変された地域に適応し、都市野生生物英語版の例となることがある。

一般に雑食動物はジェネラリストであることが多い。草食動物はしばしばスペシャリストだが、多様な植物を食べる草食動物はジェネラリストと見なされ得る。よく知られたスペシャリストの例として、ほぼユーカリの葉だけで生きるコアラ(単食性)がある。アライグマはジェネラリストで、北米中米の大半に自然分布域をもち、ベリーチョウなどの昆虫、各種の小動物を食べる雑食である。

オオカバマダラ

昆虫、とりわけ在来ハナバチ鱗翅目(チョウ目・ガ目)では、スペシャリスト種が多い[1][2]。たとえば米国の在来ハナバチ種の約半数は花粉専門で、特定の属から資源を集める[3]絶滅の懸念があるオオカバマダラは、トウワタ属(Asclepias)にのみ産卵する。こうした依存関係は、食物連鎖を支える在来植物の重要性を強く示している。

ジェネラリストとスペシャリストの区別は動物に限られない。たとえば、ある植物は狭い温度土壌降水の範囲でしか生きられないのに対し、別の植物は広い条件に耐える。サボテンはスペシャリストの一例で、高緯度の冬には枯死しやすく、過剰な水でも死に至る。

体重(体格)を統制すると、虫食動物英語版や果実食動物英語版のようなスペシャリストは、葉食動物英語版のようなジェネラリストより広い行動圏をもつ傾向がある。これは、スペシャリストの餌資源が比較的乏しく斑状で、採餌英語版に広い面積を必要とするためである[4]。例として、ティム・クラットン=ブロックの研究では、コロブス属英語版(葉食のジェネラリスト)の行動圏は15ヘクタールに過ぎない一方、より特化したアカコロブス属英語版は70ヘクタールの行動圏を必要とし、そこに斑状に分布する新芽・花・果実を求めることが示された[5]

環境条件が変化すると、ジェネラリストは適応しやすいが、スペシャリストは絶滅に陥りやすい[6]。たとえば、ある種が絶滅すれば、その魚に特化した寄生者もまた絶滅の危機に直面する。他方、高度に特化した生態的地位(ニッチ)をもつ種は、他の生物との競争により有利とされることがある。たとえば魚とその寄生者の関係は共進化の一形態である進化的軍拡競争で、魚は寄生者への防御を発達させ、寄生者は宿主の特異的防御に対抗適応する。条件が比較的安定していれば、これはより特化した種の種分化を駆動しやすい。新種の形成に伴いニッチ分割が起こり、生物多様性は増加する。

スペシャリストの利点は、明確に定義されたニッチをもつため、他種との競争が減ることである。一方、ジェネラリストは一つのニッチから引き出せる資源はスペシャリストほど多くなく、多様なニッチから資源を見いだす。そのうえ、他種もジェネラリストになり得るため、種間競争は増え、生態系内のジェネラリスト全体の取り分は減少する[7]。スペシャリストの草食動物は、ジェネラリストと比べて形態学的な差異をもち、特定の餌項目をより効率的に採食できたり、ジェネラリストでは耐えにくい植物を食べられたりすることがある[8]

関連項目

脚注

  1. ^ "Insects Are a Lot Like Us". Xerces Society. Retrieved 2024-06-14.
  2. ^ Langellotto, Gail (2021-07-28). "Insect specialists". Garden Ecology Lab. Retrieved 2024-06-14.
  3. ^ "What is the role of native bees in the United States? | U.S. Geological Survey". www.usgs.gov. Retrieved 2024-06-14.
  4. ^ Krebs, J. R.; Davies, N. B. (1993). An Introduction to Behavioural Ecology. Wiley-Blackwell. ISBN 0-632-03546-3.
  5. ^ Clutton-Brock, T.H. (1975). "Feeding behaviour of red colobus and black and white colobus in East Africa". Folia Primatologica. 23 (3): 165–207. doi:10.1159/000155671. PMID 805763.
  6. ^ Townsend, C.; Begon, M.; Harper, J. (2003) Essentials of Ecology (2nd edition) p.54-55 Blackwell, ISBN 1-4051-0328-0
  7. ^ Michálek, Ondřej; Petráková, Lenka; Pekár, Stano (2017). "Capture efficiency and trophic adaptations of a specialist and generalist predator: A comparison". Ecology and Evolution. 7 (8): 2756–2766. Bibcode:2017EcoEv...7.2756M. doi:10.1002/ece3.2812. ISSN 2045-7758. PMC 5395461. PMID 28428866.
  8. ^ Ali, Jared G. (May 2012). "Specialist versus generalist insect herbivores and plant defense" (PDF). Trends in Plant Science. 17 (5): 293–302. Bibcode:2012TPS....17..293A. doi:10.1016/j.tplants.2012.02.006. PMID 22425020 – via Cornell.edu.

ジェネラリストとスペシャリスト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 06:13 UTC 版)

クモ」の記事における「ジェネラリストとスペシャリスト」の解説

かつて動物生態学者のエルトンは「クモの網ゾウかからない」という言葉を残し喰う喰われるの関係の大事さ主張した。これは捕食者と言っても何でも喰うものではなく、その獲物範囲限られているという指摘ではあるが、「クモの網大きささえ合えば、どんなものでも捕まえるだろう」、つまり「獲物選り好みはしないだろう」という趣旨予断がある。実際多くクモは特に獲物選ばないジェネラリストであろう予想される。だが、明らかに決まった獲物しか選ばないものも知られており、例えば以下のようなものがある。 イノシシグモ:陸上等脚類 ミジングモ類・アオオビハエトリアリ ナゲナワグモなど:一定範囲のガのオス オナガグモ・センショウグモ科・アゴダチグモ科など:他種クモ

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