『和解のために』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 05:10 UTC 版)
日韓で論争のある教科書問題・慰安婦問題・靖国神社問題・独島(竹島)問題を取り上げた 金富子は、「あまりにも国家中心・男性中心。植民地主義への批判が欠落し、被害と加害を同列化している。」との批判した。女性史研究家鈴木裕子も、「朴裕河現象」として否定的に評価した。 徐京植は、「自分こそが「日本」を正しく理解しており、「韓国」はそれを理解していない、という粗雑な論法には呆れるほかない」、「朴裕河にとって責任ある知識人とは、たとえそれがどんなに反人権的かつ非人道的なものであろうと、国家がいったん締結した条約には最後まで黙々と従う人のことらしい。これほど国家権力を喜ばせ、植民地支配者やその後継者たちに歓迎されるレトリックもないであろう」と厳しく批判している。 木村幹は、朴の分析や指摘に賛同しつつも、提案する処方箋については、民族主義に突き動かされる人々の目線に立っておらず効果的であるとは思えないと考察している。 圑野光晴は、朴の解決を模索する生産的な姿勢や挺身隊対策協議会に対する批判に賛同しながらも、朴が高く評価する「民族主義を超えようとする日本人の自己批判」は、単なるナショナリズムからの逃避であったり、自らのナショナリズムへの無自覚からも来ているものであると指摘、右派的ナショナリズムだけではない日本の戦後ナショナリズムの全体像を見極め、評価と批判を加えていくべきであると述べた。 島田洋一は、慰安婦に関する記述を引用し、欠陥はあるが臆せず正論を述べていると評した。 高橋源一郎は「朴が試みたのは、真実を単純化させないために、、両者の意見に徹底的に耳をかたむけること」であり、「被害と加害は単純に分類でき」ず、「時に、被害者は加害者でもあった」点を指摘しているとしている。 本書が第7回大佛次郎論壇賞を受賞した当時の選考委員でもあり朝日新聞論説主幹でもあった故若宮啓文は東亜日報のコラム[東京小考]で本書を「歴史教科書、従軍慰安婦、靖国神社、竹島(独島)という、日韓に横たわる4つの難問を正面から取り上げ、日本だけでなく、韓国側の行き過ぎた主張を批判しつつ和解の道を探る鮮烈な作品だった。賞の選考にあたっては、その緻密な論理の運びに加え、批判を覚悟で鋭く問題提起する勇気が高く評価された。」とし、さらに選考委員であったハーバード大学名誉教授入江昭の次のような選考理由を紹介している。「朴裕河さんの著書は、学問的な水準も高く、時事問題の解説としてもバランスがとれ、しかも読みやすい文章で書かれた、まれに見る優秀作である。韓国と日本のあいだに横たわる誤解、無知、あるいは感情的対立という重い問題に正面から立ち向かい、歴史文献や世論調査などを綿密に調べた上で、説得力のある議論を展開している。このような書物が韓国と日本で出版されたということは、両国関係の健全な発展のために喜ぶべきことであるのみならず、世界各地における国家間あるいは民族間に和解をもたらすうえでも重要な示唆を与えてくれるであろう」。
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