「電脳」三部作、『ディファレンス・エンジン』、そして「橋」三部作
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「ウィリアム・ギブスン」の記事における「「電脳」三部作、『ディファレンス・エンジン』、そして「橋」三部作」の解説
詳細は「:en:Sprawl trilogy」、「:en:The Difference Engine」、および「:en:Bridge trilogy」を参照 ギブスンの評価の多くはいまだに『ニューロマンサー』に基づいているが、彼の作品はコンセプト的にも、スタイル的にも進化しつづている。彼は次に The Log of the Mustang Sally と題した無関係なポストモダンなスペースオペラを書こうとしたが、ハードカバーの『カウント・ゼロ』のカバーアートについての不破のあとでアーバーハウスとの契約が守られなかった。The Log of the Mustang Sally を断念したギブスンは、代わりにラリー・マカフェリーの言葉を借りればサイバーパンク文学の「灯りを消した」作品である『モナリザ・オーヴァドライヴ』(1988年)を執筆した。これは前の2作と共同の登場人物が登場する同じ宇宙を舞台にした集大成であり、この作品で「電脳」三部作を完成させた。この3部作はギブスンの名声を確固たるものにし、2作目と3作目もネビュラ賞、ヒューゴー賞、ローカスSF賞にノミネートされた。 「電脳」三部作に続いてブルース・スターリングと共同執筆した1990年の歴史改変小説『ディファレンス・エンジン』が発表された。テクノロジーが発達したヴィクトリア朝のイギリスを舞台にしたこの小説は、著者のサイバーパンクのルーツとは一線を画すものであった。この小説は1991年のネビュラ賞 長編小説部門に、1992年にはジョン・W・キャンベル記念賞にノミネートされ、この成功がスチームパンクと言う新しい文学のジャンルに注目を集め、現在まで最も有名な作品となっている。 ギブスンの2番目のシリーズである「橋」三部作は「ダークでコミカルな都市探偵物語」である、『ヴァーチャル・ライト(英語版)』(1993年)、『あいどる(英語版)』(1996年)、『フューチャーマチック(英語版)』(1999年)から構成されている。三部作の1作目と3作目は、近未来のサンフランシスコを舞台にしており、3作ともギブスンが繰り返す技術的、物理的、精神的な超越というテーマを、最初の三部作よりも地に足をつけた、事実に即したスタイルで探求している。Salon.comのアンドリュー・レナード(英語版)は「橋」三部作では、ギブスンの悪役は「電脳」三部作の多国籍企業やタブロイドテレビや有名人のカルトといいったものに変化していると指摘している。あるレビュアーによると『ヴァーチャル・ライト』は「私企業と利益への動機が論理的な結論に至る末期の資本主義を描いている」とのことである。資本主義の自然な進化としてマスメディアに関するこの議論はシチュエーション主義の代表作『スペクタクルの社会』の冒頭のセリフである。レナードの書評では『あいどる』はギブスンの「形への回帰」と呼ばれ、評論家のスティーヴン・プール(英語版)は『フューチャーマチック』がギブスンの「SFの名手から近未来の気の利いた社会学者への発展」を示したと主張している。
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