「塔」の語源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 02:04 UTC 版)
日本語の「塔」の語源はサンスクリット(梵語)の स्तूप (stūpa、ストゥーパ、意味: heap、…を積み上げる、蓄積する)に求められる。この語は古代インドにおいて、饅頭型に盛り上げた土の塚のことをも指すようになっていたが、仏教には今日で言うところの「卒塔婆」の意味で採り入れられた。stūpa は中国で「窣堵坡(古代中国語の発音 [*suːdtaːʔpʰaːl])」と音写漢訳され、やがて「窣(卒)」が脱落して「堵坡(塔婆)」に変化したと考えられている。ただし、「堵坡(塔婆)」はサンスクリット stūpa のパーリ語形である tūpa (トゥーパ)が音写漢訳されたものとの説もある。「塔」は、そのいずれかの形からさらに省略され、1文字で表されるようになったものである(現代中国語の発音は「ター、拼音: tǎ」)。 日本では古神道における神奈備(かみなび)や磐座信仰(いわくらしんこう)が石塚信仰となり、仏塔と結びつき供養塔となった。墓の場合もあるが、祈念や祈願として「そこに宿る命」が荒ぶる神にならぬように、慰霊や鎮魂として祀ったものであり、五重塔などを模したものも多いが、ただの石版の場合もある。また祀られるものも食料として捕獲した魚や鯨であったり、包丁や人形などの器物(道具など)のものもあり、森羅万象に命が宿るとする神道の観念に基づくものとなっている。 日本における「塔」は、江戸時代までは、仏教寺の構造物のみを指す言葉として使用されていた。したがって、江戸時代前後の高層建造物、例えば、吉野ヶ里遺跡で再現される古代の櫓(やぐら)や中世の城郭建築に見られる天守を一般に「塔」と呼ぶことはないが、形式では塔のように建てられたものを層塔型と言うことがある。 しかし、明治以降に入ってきた西洋建築物の構成していた構造物の tower の対訳語として「塔」が使われるようになる。電波送信の高いアンテナや送電のための構造物も「塔」の字があてられるようになった。したがって、現在の「塔」の用法に厳密な定義が存在するわけではない。 なお、塔の助数詞は「基」であるが、これも仏塔由来と考えられる。また、助数詞として「層」なども使われることがある。
※この「「塔」の語源」の解説は、「塔」の解説の一部です。
「「塔」の語源」を含む「塔」の記事については、「塔」の概要を参照ください。
- 「塔」の語源のページへのリンク