「クソゲー」に至る変遷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/07 04:10 UTC 版)
先述の『バグニューズ』では1985年末頃に、ゲームソフトのレビュー記事などで「つまらないタコソフト」、「出しても売れないようなタコなソフト」という記述が登場している。一方パソコン雑誌『The BASIC』では、1985年の初頭あたりから、「ダメソフト」との呼び方が時折現れているのが確認できる。これらから、1985年頃のパソコンマニアの間では、主にゲームを念頭につまらないソフトを「(罵倒語)ソフト」と呼ぶことが、少しずつ広まっていたものと考えられる。もっともこれらは、この時期のパソコン雑誌上ではめったに見られない表現でもあり、あまり大っぴらに使われるものではなかった。 1985年には、「つまらないソフト」の問題はファミコンにも広がっていた。同年中頃からサードパーティー製のソフトの発売が大きく伸びており、『スーパーマリオブラザーズ』が発売された10月以降は30作近く発売されている。翌年以降は更に伸びており、この時期大量のソフトが市場に流れ込んでいた。それらの開発元には、必ずしも技術が伴っているとは言えないものもあり、『スーパーマリオ』により更に引き上げられたプレイヤーの要求に応えられず、不評を買うことも増え始めていた。加えてファミコン本体の品薄を背景に、ソフトととの「抱き合わせ商法」が横行し、少なからぬ数の「つまらないソフト」が、ブームを支えた子どもたちの手に渡った。 1986年の時点では、氷水芋吉が『Beep』5月号の記事の中で、「スカ・ソフト」という表現を使っている。堀井雄二は『ログイン』10月号で、「カスゲーム」という言葉を使っている。この時点では「(罵倒語)ソフト(又はゲーム)」という表現には、未だ定まったものがなかったようである。その中で「クソゲー」が突出して広まった1つの手がかりになりそうなのが、1987年末に発行された、商業出版でのビデオゲーム関連用語集の草分け『新明解ナム語辞典』である。ここでは「クソゲー」について、「しょーもないゲームのこと。これは南青山あたりから発生した語であるが、類語として「ダメソフト」「お買い損ソフト」など、その他地方地方によってさまざまな言い回しがある。」と解説している。 南青山はその当時にアスキーが所在していた地区であり、『ファミコン通信』1986年12月12日号「ファミ通町内会」の中の、「ゲーム用語の基礎知識」に「くそゲー」の項目があり、以下のように解説されている。 青少年諸君は、あんまり使ってはいけないことば。一般に、目を蓋いたくなるようなゲームをさして使用する。(例、「おまえ、あんなくそゲー買っちゃったの?」)。しつこいようだが、青少年諸君は使ってはいけない。 さらに翌1987年の2月6日号では、荒井清和の人気漫画『べーしっ君』に、「あらやだ とってもつまらないわこのゲーム…… こういうのをクソゲーっていうのね」というセリフが登場している。主人公の母親のセリフであり、ゲーム用語の基礎知識とも矛盾しておらず、子供たちの間で「クソゲー」という言葉の存在を広める上で、かなり大きな役割を果たしたとも言われる。 またこれ以前に、1985年5月ごろからほぼ1年間にわたり、ナムコのファミコンソフトのテレビCMで「クーソーは、頭のコヤシです。」、「クーソーしてから、寝てください。」という眞木準によるキャッチコピーが繰り返し流れ、子どもたちの間でも話題を呼んでいた。「糞」をポジティヴな内容に転換したこのCMを更に逆転させ、そこから生まれる面白さが「クソゲー」の広まりを後押しした可能性もあるとされている。 「クソゲー」という言葉に対しみうらじゅんが果たした役割の1つに、それまでの「(罵倒語)ソフト(ゲーム)」という表現が、怒りや嘲りの発露として使われていたのに対し、ユーモアも含めてそれだけではない思いも表し、よりカジュアルな言葉として広めたことにあるともされる。
※この「「クソゲー」に至る変遷」の解説は、「クソゲー」の解説の一部です。
「「クソゲー」に至る変遷」を含む「クソゲー」の記事については、「クソゲー」の概要を参照ください。
- 「クソゲー」に至る変遷のページへのリンク