野口悠紀雄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/12 22:58 UTC 版)
「超」整理法
- 「超」整理手帳(ちょうせいりてちょう)を1996年に考案した。当時、手帳としては異色のA4横四つ折というサイズで、8週間が一覧できるジャバラ式のスケジュールシート4つで構成される。
- 「超」整理法シリーズはベストセラーになっており、毎年発売され、基本的な形は当初のままである。これは従来の整理法(京大式カードなど)は、個人では実行困難(個人で図書館のように整然と分類する必要はない)として、考案したシステムである。使ったファイルは手前に置くという「押出しファイリング」(Least Recently Used)とパソコンの全文検索機能を利用した方法を提案している。
主張
1940年体制
1990年代以降に続いた長期不況に関して、その原因が戦時中に構築されたシステム(「1940年体制」)の非効率さにあると主張した。1940年体制とは、日本的な企業、経営、労使関係、官民関係、金融制度など日本経済の特徴とされる様々な要素が、1940年頃に戦時体制の一環として導入されたとする概念である[18]。
野口は、
- 高度経済成長は、戦時体制によって実現された。戦時体制は、敗戦後も生き残り、高度経済成長を実現する上で、本質的な役割を果たした。
- 日本経済の特徴とされる要素は、戦時経済の要請によって導入されたものであり、日本の歴史の中では比較的新しいものである。
としており、「戦時体制からの脱却(構造改革)」を主張している[19]。
著書の『1940年体制』は、いわゆる「構造改革論」のバイブルと目されている。野口らの提議した構造改革論に対しては、岩田規久男や野口旭らから痛烈な批判が寄せられたが、2004年以降の景気回復局面においては、議論は一時期雲散霧消してしまった感が否めない。なお、「1940年体制」に対して、堺屋太一は「昭和十六年体制」と呼称した理論を展開している[20]。
TPP
TPPについて「TPPがGDPを増加させる効果は、ほとんどない」、「日本の輸出に与える影響はきわめて小さい」、「関税以外の点での日本開国も、TPPによらなくともできる。」といった主張をした[21]。
デフレーション
通貨が減価し、東アジア諸国の価格競争力が高まりつつあった2009年当時のデフレーションにおいて、次の様に主張した。「東アジア諸国と日本企業が競争しようとしても、勝ち目はない。対応しようとすれば、生産拠点の海外転を促進するしかない。日本国内で見た輸入品の価格は安くなる。これを利用した経済活動に転換することが重要である。」、「『よいデフレ』とか『悪いデフレ』と言われることがあるがそうした区別は存在しない。立場によって評価が異なるだけである[22]」、「必要なのは、『デフレからの脱却』ではなく、『所得低下からの脱却』である。、工業製品の価格低下は、実質所得をさらに引き上げる望ましい現象として、歓迎されることになるだろう[23]」と述べている。
食料自給率
比較優位の観点から「日本の食糧自給率が低くても何の問題もなく、むしろ豊かな食生活をおくっている証拠である」という趣旨のことを主張している[24][25]。
ウィキペディアへの批判
野口はウィキペディアについて“ブリタニカにも匹敵する”と激賞しつつ、自身の項目に事実に反したことが書いてあったことに不快感を示し“誤りに対する責任の所在も明確ではない。ウィキペディア日本語版の管理者は誰であるのか、明確にされていないからである。さまざまな問題が指摘される「2ちゃんねる」でさえ、管理責任者が誰であるかは明確にされている。それと比べると、ウィキペディア日本語版の信頼性は「2ちゃんねる」以下と言わざるをえないのである”と批判している[26]。
仮想通貨
野口はビットコインについて「通貨史上の大きな革命であるばかりでなく、まったく新しい形の社会を形成する可能性を示した」と評価している[27]。また、同氏は著書『仮想通貨革命』において「ビットコインは始まりにすぎない」と主張し、Googleが出資を行い各国の銀行が実証実験に参加しているリップルとビットコインの仕組みを貨幣以外の対象に拡張しようとする試みのイーサリアムは大きな可能性を秘めると述べている[28]。更に、現在の通貨と共存しうるリップルはビットコインより使いやすく、「リップルが広く使われるようになれば、ビットコインは不要になるかもしれない」とも述べている[28]。
消費税
2015年10月に予定されていた消費増税について「景気に関係なく上げるべきである。消費税が経済に悪影響を与えるのは当たり前であるが、増税しないと財政に対する信頼が失われ、金利が高騰する。その方が日本経済にとってはるかにダメージが大きい」と指摘した[29]。
受賞
- 1967年 - 政府主催明治100年記念論文 最優秀総理大臣賞(大蔵省在職中)
- 1969年 - カリフォルニア大学ロサンゼルス校優秀学生同窓会賞
- 1974年 - 第17回日経・経済図書文化賞(『情報の経済理論』)
- 1979年 - 毎日新聞社エコノミスト賞
- 1980年 - サントリー学芸賞(政治・経済部門、『財政危機の構造』などに対して)[30]
- 1989年
- 東京海上各務財団賞
- 日本不動産学会賞
- 1992年 - 中央公論吉野作造賞
- 1996年 - ソフト化経済センター・ソフト化賞
- 2017年 - 大川出版賞
- ^ a b c d “野口悠紀雄(経済学者)|NTTデータ”. 2021年8月19日閲覧。
- ^ 「1988年度博士課程単位修得論文・修士論文題目」一橋研究
- ^ [1]
- ^ a b c 野口悠紀雄『ブロックチェーン革命』(第1版)日本経済新聞出版社、2017年1月、著者紹介頁。ISBN 978-4-532-35719-1。
- ^ 野口悠紀雄、野口貴公美「親子のカタチ:野口悠紀雄×野口貴公美」『週刊朝日』2008年10月17日号。
- ^ a b c d e f g “野口 悠紀雄|講師セレクト”. 2021年8月19日閲覧。
- ^ a b 『潮 第529〜530号』潮出版社、2003年発行、223頁
- ^ 『戦後経済史―私たちはどこで間違えたのか』東洋経済新報社、2015年発行、23頁
- ^ “野口悠紀雄|著者プロフィール|新潮社”. 2021年8月19日閲覧。
- ^ 『職員録 昭和49年版 上巻』大蔵省印刷局、1973年発行、490頁
- ^ 『財政危機の構造』東洋経済新報社、1980年発行、245頁
- ^ 野口悠紀雄『戦後日本経済史』新潮社〈新潮選書〉、2008年。ISBN 9784106035968。
- ^ 野口悠紀雄web R25 2006年11月9日
- ^ 数十万円
- ^ 「たからもの 野口悠紀雄さんの望遠鏡」読売新聞2014年8月4日朝刊14面
- ^ 野口悠紀雄『「超」勉強法』、講談社、1995年、226-232頁。
- ^ “自宅にいながら「経済学と英語」をマスターするにはどうすればいいか 「学校に行かなければ」は思い込み”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2020年4月13日). 2022年1月9日閲覧。
- ^ 野口悠紀雄 『日本経済再生の戦略-21世紀への海図』 中央公論新社〈中公新書〉、1999年、119頁。
- ^ 野口悠紀雄 『日本経済再生の戦略-21世紀への海図』 中央公論新社〈中公新書〉、1999年、120-121頁。
- ^ 堺屋太一『日本の盛衰―近代百年から知価社会を展望する』PHP研究所〈PHP新書〉、2002年。ISBN 4569624863。
- ^ 日本のTPP交渉参加を、中国はどう見ているか?ダイヤモンド・オンライン 2013年3月21日
- ^ デフレ脱却など無意味! 重要なのはドル安に対応できる経済への転換だダイヤモンド・オンライン 2009年11月28日
- ^ 日本の「デフレ」のメカニズム --財対サービス、製造業対サービス産業の差が重要ダイヤモンド・オンライン 2012年6月21日
- ^ 『資本開国論』[要ページ番号]など。
- ^ TTPと農業問題の本質:農業七不思議:農水省が仕組んだ食料自給率が引き起こす混乱 その2誠ブログ2012年2月15日 の「出典:野口悠紀雄 食料問題の本質は量不足でなく高価格」の引用部
- ^ 野口悠紀雄「ウィキペディアは神か怪物か」「週刊ダイヤモンド」2006年7月15日号「超」整理日記第323回 ダイヤモンド社(126-127ページ)
- ^ 野口悠紀雄 (2014年2月20日). “ビットコインは社会革命である――どう評価するにせよ、まず正確に理解しよう”. ダイヤモンド社. 2016年3月17日閲覧。
- ^ a b 野口悠紀雄 (2014年4月3日). “大きな可能性を秘める「リップル」と「イーサリアム」――ビットコインに続くもの”. ダイヤモンド社. 2016年3月17日閲覧。
- ^ 円安は明らかにマイナス、アベノミクスは間違い-野口悠紀雄氏Bloomberg 2014年10月10日
- ^ 野口 悠紀夫 サントリー学芸賞 - サントリー文化財団ウェブサイト、熊谷尚夫による評
- ^ 「『風の谷のナウシカ』に関する主観的一考察」。「超」整理日誌(1)(新潮文庫)収録
- 1 野口悠紀雄とは
- 2 野口悠紀雄の概要
- 3 「超」整理法
- 4 著書
- 5 脚注
固有名詞の分類
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