実数 解析学における実数

実数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/05 01:11 UTC 版)

解析学における実数

実数の完備性により、実数に値を持つ関数の範疇で様々な近似操作を考えることができ、微積分などが定義される。特定のクラスの関数たちに対して距離の概念などを用いて位相を考えると位相線形空間が得られる。こうして得られるものは多くの場合に無限次元であるが、考えている位相に関して完備になっている。関数解析学では、この概念を公理化した実数体上で考えられる完備位相線形空間とよばれる様々な空間が研究される。

位相空間上の関数やその積分の収束を考えるときは、問題にしている関数たちによって指定される位相空間の部分集合が重要になるが、こうして可測集合の概念が得られる。例えば実閉区間 [0, 1] 上の関数を考えるときには一点集合 {t} (0 ≤ t ≤ 1) や開集合を含んで、補集合をとったり可算個の合併について閉じていたりするような集合族を考えることになる。距離を持つコンパクト空間の可測集合のなす構造は、高々可算集合または閉区間 [0, 1] の構造に同型となることが知られている。

幾何学における実数

ウリゾーンの補題(英語: Urysohn's lemmaから正規空間とよばれる広いクラスの位相空間の位相構造(つまり、どの部分集合が開集合か)はその上の実数値連続関数のなす空間に完全に反映されていることがわかる。

ユークリッド空間は有限次元の実ベクトル空間にその構造と両立するような距離をあたえたものとして定式化される。実1次元ベクトル空間を平行移動したものが直線を示し、実2次元ベクトル空間を平行移動したものが平面を表していると見なせる。古典的なユークリッド幾何学は2次元や3次元のユークリッド空間とその構造を保つような変換についての研究だと解釈できる。

現代数学における図形の基本的な定式化の方法として多様体の概念が挙げられるが、これは局所的にはユークリッド空間のように見える「端切れ」を張り合わせたものとして定式化される。したがって多様体の点は局所的にはいくつかの実数の組による座標付けを持ち、多様体上の実数値関数について微分や積分を考えることが可能になる。

多様体は連続的なものとして定義されるので、その連続的な「時間発展」、「変化」、あるいは「変形」を考えることができるが、これはしばしば加法群 R の微分同相による作用と考えることができる。このような作用は力学系とよばれ、その類似として様々な分野でも R の作用が研究される。

代数学における実数

実数の集合 Rの構造を持っており、実数を係数とした多項式や実数の拡大体を考えることができる。ここで実数が極大順序体であることにより実数係数の多項式は 3 次以上なら既約にならない。したがって R の有限次元拡大になっている可換体は R 自身と複素数体 C しかなく、可換性を外してもほかの有限次拡大体は四元数H しかない。

数論的に重要と見なされる位相群に(Q の)イデアル類群 C があるが、その単位元連結成分は加法群 R と同型である。Qアデール AQ の乗法群で割った A/Q× へのこの C正規部分群の作用の理解がアラン・コンヌによるリーマン予想プログラムの一部分をなしている。

代数体のうちで複素数体への埋め込み先が必ず実数に含まれるようなものは総実代数体とよばれ、代数的整数論において重要な役割を果たしている。


  1. ^ この性質を順序完備性と呼ぶことがある。実数体においては特に「上限性質」という呼称で呼ばれることが多い。なおこの性質には実数の連続性にある通り同値な言い換えが複数ある。
  2. ^ これは正確に述べると「実数体の定義を満たす二つの順序体は順序体として同型(=順序同型かつ体同型であるような写像が存在する)」という意味である。
  3. ^ https://proofwiki.org/wiki/Subgroup_of_Real_Numbers_is_Discrete_or_Dense
  1. ^ 鈴木紀明「数学の記号(2010年4月)」(名城大学鈴木研究室)[1]
  2. ^ 中村亮一「数学記号の由来について(8)」[2]
  3. ^ a b Arthan 2004.
  4. ^ kotobank-アーベル(Niels Henrik Abel).


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