刑罰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 03:42 UTC 版)
厳罰化問題
犯罪が増加した場合、または抑止効果を狙って、死刑の適用、懲役・禁錮の年数増加など刑を重くすること(厳罰化)が行われることがある。つまり、ルールを破った者、罪を犯した者への対応として、教育することと、制裁を加えることのバランスにおいて、後者により重きを置くのである。
厳罰化は立法による場合(法定刑の引き上げ)、行政による場合(求刑の引き上げ)、司法による場合(量刑の引き上げ)によってなされる。厳罰化には、犯罪に対するより厳格な報復を望む被害者・遺族および世論の要望に応える目的や、社会感情を鎮めること、社会秩序の維持、国家や警察・検察機関の体面の維持などが挙げられる、さまざまな社会的要因が関係する。
犯罪報道の過熱化と厳罰化とは密接な関係が指摘されている。日本では、1995年のオウム真理教事件、1997年の神戸連続児童殺傷事件を発端にして、ワイドショー番組でも盛んに事件報道が行われるようになった。
ワイドショーで視聴率の取りやすい報道は、あからさまに恐怖を煽ったり、犯人の残虐性を強調したり、被害者の悲しみや怒りを情緒的に伝える報道であり、報道番組の事実解明重視型の報道とは大きく異なるものとなった。このことにより、データとはかけ離れた感覚での社会不安が高まった(モラル・パニック[10]、体感治安の悪化)。
例としては、殺人罪の法定刑が、「死刑又は無期若しくは3年以上の懲役」から「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」に引き上げられた。
歴史的観点による考察
孔子は史記において、法令によって民を導き、刑罰によって民を統制しようとすると、民は法令や刑罰の裏を潜る事だけを考え、悪を恥じる心を持たなくなるといい、道徳によって民を導き、礼儀によって民を統制すれば民には悪を恥じる心が育ち、正しい道を踏み行うようになる[11]。更に史記では老子によると、高い德を具えた人は自分を有徳者だとは意識しないため、德が身に付き、つまらない德しか具えていない人は自分の德を誇示しようとするため、德が身に付かないといい、法律や禁令は整備されるほど盗賊が増えるという[11]。同様に史記において、太史公は前述の孔子と老子の言葉に賛同し、法令は世を治める道具であり、政治の好し悪しを決定する根源ではないという[11]。
- ^ 川端博 2006, p. 665.
- ^ 前田雅英 2007, p. 2.
- ^ a b c d e 大谷實 2009, p. 105.
- ^ a b c d e f g 大谷實 2009, p. 106.
- ^ a b c d 大谷實 2009, p. 112.
- ^ “「拘禁刑」新設を閣議決定 懲役と禁錮を一本化、刑務作業なしも可に”. 朝日新聞デジタル (2022年3月8日). 2022年5月13日閲覧。
- ^ a b c d e 村瀬信也 & 洪恵子 2014, p. 242「ICCの刑事手続の特質」高山佳奈子執筆部分
- ^ a b 村瀬信也 & 洪恵子 2014, p. 243「ICCの刑事手続の特質」高山佳奈子執筆部分
- ^ 村瀬信也 & 洪恵子 2014, p. 244「ICCの刑事手続の特質」高山佳奈子執筆部分
- ^ “治安の悪化は本当か?――つくられたモラルパニック”. 「NO!監視」ニュース 【第6号】. 監視社会を拒否する会 (2004年1月30日). 2018年4月23日閲覧。
- ^ a b c 青木五郎、司馬遷『新釈漢文大系115 史記 十三(列伝 六)』明治書院、2013年12月10日、2頁。ISBN 978-4625673184。
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