ホスゲン
ホスゲン
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/25 18:06 UTC 版)
ホスゲン[1] | |
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ホスゲン(許容慣用名) |
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別称
炭酸ジクロリド
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 75-44-5 ![]() |
EC番号 | 200-870-3 |
国連/北米番号 | 1076 |
RTECS番号 | SY5600000 |
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特性 | |
化学式 | CCl2O |
モル質量 | 98.92 g/mol |
外観 | 無色気体 |
匂い | 青草臭または木材や藁の腐敗臭 |
密度 | 4.248 g/dm3 (15 ℃) 1.432 g/cm3 (0 ℃) |
融点 | −118 °C, 155 K, -180 °F |
沸点 | 8.2 °C, 281 K, 47 °F |
水への溶解度 | hydrolysis |
構造 | |
分子の形 | Planar, trigonal |
双極子モーメント | 1.17 D |
危険性 | |
安全データシート(外部リンク) | ICSC 0007 |
GHSピクトグラム | ![]() ![]() |
GHSシグナルワード | Danger |
Hフレーズ | H314, H330 |
Pフレーズ | P260, P264, P271, P280, P284, P301+330+331, P303+361+353, P304+340, P305+351+338, P310, P320, P321, P363, P403+233 |
NFPA 704 | |
引火点 | 不燃性 |
関連する物質 | |
関連物質 | チオホスゲン ホルムアルデヒド 炭酸 尿素 一酸化炭素 クロロギ酸 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ホスゲン (英: Phosgene) とは、炭素と酸素と塩素の化合物。二塩化カルボニルなどとも呼ばれる。分子式は COCl2 で、ホルムアルデヒドの水素原子2つを塩素原子で置き換えた構造を持つ。毒性の高い気体であり、毒物及び劇物取締法によって毒物に指定されている[2]。1812年にイギリスの化学者ジョン・デービー(同じく化学者であるハンフリー・デービーの弟)によって発見された[3]。
用途
化学工業分野で重要な化合物であり、1812年に初めて合成された[4]。一酸化炭素と塩素から多孔質の炭素を触媒として合成される。ポリカーボネート、ポリウレタンなどの合成樹脂の原料となる。
有機合成分野でもホスゲンはアルコールと反応して炭酸エステルを、アミンと反応して尿素あるいはイソシアネートを、カルボン酸と反応して酸塩化物を与えるなど用途が広い。ただし猛毒の気体であるホスゲンは実験室レベルでは使いにくく、近年では炭酸ビス(トリクロロメチル)(通称 トリホスゲン)が代用試薬として用いられるようになった。この試薬は安定な固体だが、トリエチルアミンや活性炭の作用で分解し、in situ で3当量のホスゲンを発生する。ホスゲンに比べて格段にハンドリングが容易なため、近年使用例が増えている。
また、フロン類(クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン)が加熱される事でも発生するので、特に冬季など暖房器具を使用する時期には中毒事故が発生しやすかった。室内の空気に塩素を含む有機性のガス、あるいは塩素と有機性のガスが存在する場合に、放電式の空気清浄機を使用すると、中毒事故が起こる可能性がある。
毒性が強く、化学兵器(毒ガス・窒息剤)とされている[5][6]。第一次世界大戦では大量に使用された[7]。旧日本軍では「あお剤」と呼称している[8]。現在の日本では化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律の第二種指定物質・毒性物質であり、同法の規制をうける。詳細は化学兵器禁止条約を参照。
性質
20 ℃ では気体である。沸点は 8 ℃ で、純粋なホスゲンは独特の青草臭であるが[4]、毒ガスに使われるような低純度なもの、希薄なものは木材や藁の腐敗臭がするといわれている。
- ルイサイト (L)
- サルファマスタード (HD, H, HT, HL, HQ)
- ナイトロジェンマスタード (HN1, HN2, HN3)
- ホスゲンオキシム (CX)
- エチルジクロロアルシン (ED)
G剤 | |
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V剤 | |
ノビチョク | |
カーバメート剤 | |
その他 | |
前駆体 |
- 塩素ガス
- クロロピクリン (PS)
- ペルフルオロイソブテン
- ホスゲン (CG)
- ジホスゲン (DP)
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