アクション‐ペインティング【action painting】
アクション・ペインティング
アクション・ペインティング
【英】:ACTION PAINTING
おもにニューヨークを中心に、第二次世界大戦後に起った抽象絵画の傾向。アメリカの批評家、ハロルド・ローゼンバーグの著作「アメリカのアクションペインターたち」にちなんだ呼称。1950年代の抽象表現主義の画家たちの総称として用いられるが、ドリッピングの技法を採用した1947年以降のポロックを念頭においたものだった。ローゼンバーグが“自己超越”と定義したように、完成品としての絵だけでなく、それをつくり出した過程、すなわちそれを描いていた時の芸術家の行為自体に重要性を与えることによって、ヨーロッパ風の自己表現の秩序と調和のある小宇宙を超えようとする。ポロック、デクーニングなどが代表的な作家とみなされる。
アクション・ペインティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/30 23:38 UTC 版)
アクション・ペインティング(Action painting)、もしくはジェスチュラル・ペインティング(gestural abstraction 、身振りによる抽象絵画)とは、顔料を紙やキャンバスに細心の注意で塗るかわりに、垂らしたり飛び散らせたり汚しつけたりするような絵画の様式である。作品は、具体的な対象を描いたというよりも、絵を描くという行動(アクション)それ自体が表現されたアートとなっている。
歴史
アクション・ペインティングは第二次世界大戦後、1940年代後半から1960年代にかけて欧米に広まった抽象表現主義と関連付けて語られた[1]。これをアメリカ合衆国のアクション・ペインティングと、フランスのタシズムとの比較で語ることもある。
この用語はアメリカの美術評論家、ハロルド・ローゼンバーグが1952年にはじめて使用し、ニューヨーク派の画家や評論家の間に、美学の見方について大きな変化をもたらした。それまでにも、ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングといった抽象表現主義の画家たちは、キャンバスは世界を再現する窓でなく創作行為をする場であるとして「キャンバスは闘技場である」という率直な見方をしており、クレメント・グリーンバーグら当初から彼らに好意的だった評論家らは、彼らの作品の「物質性」を強調していた。グリーンバーグにとっては、芸術家の実存的な格闘の記録として絵画を理解するためのカギは、油絵具が固まって盛り上がった絵画の表面(テクスチャ又はマチエール)にある物質性・身体性であった。
これに対し、ローゼンバーグの批評は、強調の対象を「物質」から画家の格闘それ自体に変えた。画家にとって完成した絵は、絵画の創作という行為や過程のうちに存在している現実の芸術活動の、残留物であり物質的な表明にすぎない、と彼はみた。
その後20年ほど、ローゼンバーグによる「物質でなく、行為としての芸術」「結果でなく過程としての芸術」という芸術の再定義は大きな影響を持ち、ハプニング・フルクサスからコンセプチュアル・アート、アースワークなど大きな芸術運動の基礎となった。
アクション・ペインティングを理解するには、その歴史的な文脈を知ることが重要である。これは戦後に起こった美術分野での暴動であり、量子力学や精神分析学が花開き始め、西洋文明の世界や自己に対する認識を完全に変えてしまった時代を背景にしたものでもあった。
これに先立つワシリー・カンディンスキーやピエト・モンドリアンらの作品は、対象の具象的な描写を避け、これを攻撃し、かわりに観客の感情を刺激したりじらせたりしようとした。アクション・ペインティングの場合は、進んで無意識の概念を下敷きにした。その作品はどのような対象を描写したものでもなく、観客を刺激するものでもなかった。画家にとってのアクションとは、自発的な行為を意味していた。画家は手に持った顔料をキャンバスに垂れるがままにした。彼らはただキャンバスの周りを頻繁に動き、ときにはキャンバスの上に立って、無意識に顔料を落とし、アートを表現した。
脚注
- ^ “Art History Definition: Action Painting”. ThoughtCo
関連項目
外部リンク
- Auction record including a color image of a 1960 action painting by Elaine Hamilton.
- Marika Herskovic, American Abstract Expressionism of the 1950s An Illustrated Survey, (New York School Press, 2003.) ISBN 0-9677994-1-4
- Marika Herskovic, New York School Abstract Expressionists Artists Choice by Artists, (New York School Press, 2000.) ISBN 0-9677994-0-6
アクション・ペインティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/18 02:00 UTC 版)
「抽象表現主義」の記事における「アクション・ペインティング」の解説
抽象表現主義の中でも、代表的な人物はジャクソン・ポロックであろう。彼は床に置いたキャンバスの上を動き回り、ペンキを垂らしたり撥ね付けたりという型破りな描き方で注目を集めた。アドルフ・ゴットリーブ、ウィレム・デ・クーニングらの激しい筆致も全身を使った画家の激しい動きによって描かれたことを見るものに感じさせた。 彼らの作品のように、描かれているもの以上に美術家がキャンバス上で行ったであろう行為を強く感じさせる絵画を、評論家ハロルド・ローゼンバーグは「アクション・ペインティング」と呼んで擁護し世間に紹介した。彼らは、その常識外れの描き方やできた作品の激しさから、40年代後半から50年代前半にかけてマスコミにスキャンダラスに取り上げられ有名になり、保守的な評論家やマスコミなどからは「誰でもかけそうな、子供の落書き」と攻撃されたが、その作品の直接的な強さや生命力は大戦後の人々をひきつけるものがあり熱狂的な支持も生んだ。またアメリカに一連のスター画家が生まれているという印象を国内外に与えることになった。 アクション・ペインティングは、フランスの「アンフォルメル」や日本の「具体」など、同時期に世界中で同時多発的に行われていた、「描く内容」よりも「描く行為、描き方」を重視する一連の運動とも同時に語られ、戦後のアメリカを代表する同時代美術として見られるようになった。
※この「アクション・ペインティング」の解説は、「抽象表現主義」の解説の一部です。
「アクション・ペインティング」を含む「抽象表現主義」の記事については、「抽象表現主義」の概要を参照ください。
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