MPEGオーディオ標準
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/15 21:29 UTC 版)
「知覚符号化」の記事における「MPEGオーディオ標準」の解説
ISO/IECによる知覚符号化技術を利用したMPEGオーディオ符号化規格としてMP3やAACなどがあり、広く使われている。 MPEG-1オーディオ レイヤ-I, II(ISO/IEC 11172-3) サブバンド符号化方式であるMUSICAMが規格化されたもの。レイヤ-IはMUSICAMの簡易版、レイヤ-IIはMUSICAMのアルゴリズムをそのまま使う。 共に入力信号を直交ミラーフィルタで32個のサブバンドに分割し、同時に入力信号を FFT で分析してマスキング特性を計算する。各サブバンドの符号化はマスキングレベル以上の成分のみについて行う。 レイヤ-Iは 8ms の処理単位で 512 点の FFT を行うのに対し、レイヤ-IIでは 24ms の処理単位で 1024点の FFT を行い、ビット割り当てなどの補助情報の低減とより詳細なマスキングレベルの分析によりビットレートを低減する。 レイヤ-Iは計算量が少なく高速に符号化が可能だが圧縮率は低い。PASC(Precision Adaptive Subband Coding)の名称でデジタルコンパクトカセット(DCC)に採用され、コーデックは192kbps/チャネルのビットレートである。レイヤ-II はより圧縮率が高く、ビデオCD、衛星放送(DABなど)、D-VHS、DVD-Video、Blu-ray Discなどで採用され、多くの規格の基本フォーマットとして使われている。DABでは128kbps/チャネルのビットレートで使用されている。 MPEG-1オーディオ レイヤ-III(ISO/IEC 11172-3) レイヤ-I, II にMDCTを用いた変換符号化を組み合わせたもので、通常MP3の略称で呼ばれる。より洗練されたビット割り当てとハフマン符号の使用によりレイヤ-I, II と比べて圧縮率が高く、96kbps/チャネルのビットレートで衛星放送と同等の音質である。多くの携帯型音楽プレーヤーやインターネット上での音楽配信などで使用されている。 MPEG-2 BC/LSF(ISO/IEC 13818-3) MPEG-2 BC/LSF(Backward Compatible/Low Sampling Rates)はMPEG-1オーディオを拡張した規格である。ステレオのみをサポートするMPEG-1オーディオと後方互換性を持たせながらマルチチャネル化し、またMPEG-1より低いサンプリング周波数(16、22.05、24 kHz)もサポートする。 MPEG-2 AAC(ISO/IEC 13818-7) MPEG-2 BC/LSF は後方互換性のため圧縮率はMPEG-1オーディオと変わらず、マルチチャネル化した場合のビットレートが高くなるため実用的ではなかった。MPEG-2 AAC(Advanced Audio Coding)は、より現実的なビットレートを実現するため圧縮率を向上させた方式である。原音と区別のつかない音質の 5 チャネルのサラウンド信号を 384 kbps以下で符号化することを目標に開発が行われ、実際に採用された規格では 320 kbps(64 kbps/チャネル)で目標の音質を実現できた。 MPEG-2 AACはMPEG-2 BC/LSFと異なり、32個のサブバンド分割フィルタを無くしMDCTのみを高分解能のフィルタとして用い、より単純で効率が良い。その他、変換係数の予測処理の追加、ステレオ・コーディングでの柔軟性の向上、ハフマン符号化での圧縮率の改善など、 MPEG-2 BC/LSF と比べ多くの改善が行われている。 MPEG-2 AACとそれを拡張したMPEG-4 AACは、地上デジタル放送やBSデジタル放送、Blu-ray Disc(BDAV)、iPodなどの携帯型音楽プレーヤー、携帯電話での音楽配信など多くの分野で使われている。 MPEG-4オーディオ(ISO/IEC 14496-3)(MPEG-4 AAC, MPEG-4 HILN, MPEG-4 SSCなど) MPEG-4 AACはMPEG-2 AACをベースに拡張を行ったもので、MPEG-2 AACで標準化されたAAC Main、AAC LC、AAC SSRの各方式に加え、低ビットレート符号化のための TwinVQ(Transform-domain Weighted Interleave Vector Quantization)、リアルタイム通信などの用途向けに符号化遅延を小さくしたAAC LD(Low Delay)、ビットストリームを階層化してビットレート拡張性を持たせたBSAC、高域成分を少数のパラメータで表現することで圧縮率を向上させるSBR(Spectral Band Replication)やステレオ成分のパラメータ化を行うPS(Parametric Stereo)などの機能拡張を含む。 また、AACより低ビットレートで符号化を行うため、正弦波符号化方式を採用したMPEG-4 HILN やMPEG-4 SSCの規格が含まれる。
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