B細胞受容体のシグナル伝達経路
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「B細胞受容体」の記事における「B細胞受容体のシグナル伝達経路」の解説
B細胞受容体がたどることができるいくつかのシグナル伝達経路が存在する。B細胞の生理機能は、B細胞受容体の機能と密接に関連している。BCRシグナル伝達経路は、BCRのmIgサブユニットが特定の抗原と結合することで開始される。B細胞受容体の最初の誘発は、非触媒チロシンリン酸化受容体(英語版)ファミリーのすべての受容体で類似している。この結合現象により、Blk(英語版)、Lyn(英語版)、Fyn(英語版)などのSrc(英語版)ファミリーのチロシンキナーゼ (英語版) によって、結合したIg-α/Ig-βヘテロダイマーサブユニット中での免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(英語版)(ITAM)のリン酸化が可能になる。BCR-抗原結合がリン酸化を誘導する仕組みについては、抗原結合に伴う受容体の構造変化や複数の受容体の凝集など、複数のモデルが提案されている。チロシンキナーゼSyk(英語版)は、リン酸化されたITAMに結合して活性化され、複数の部位で足場タンパク質BLNK(英語版)をリン酸化する。リン酸化後、下流のシグナル伝達分子がBLNKとして動員され、その結果、BLNKが活性化され、シグナルが内部へ伝達される。 IKK/NF-κB転写因子経路: CD79(英語版)などのタンパク質、マイクロシグナロソームは、BCRによる抗原認識後、c-SMACに結合する前にPLC-γ(英語版)を活性化する。 次に、PIP2をIP3とDAG(ジアシルグリセロール)に切断する。IP3は、細胞質基質内のイオン性カルシウムを劇的に増加させるセカンドメッセンジャーとして機能する(小胞体からの放出またはイオンチャネルを介した細胞外環境からの流入により)。 これにより、カルシウムとDAGから最終的にPKCβ(英語版)が活性化される。PKCβは、NF-κBシグナル伝達複合体タンパク質CARMA1(英語版)(CARMA1、BCL10、MALT1からなる複合体自体)を(直接的または間接的に)リン酸化する。これらの結果、CARMA1/BCL10/MALT1複合体にも関連するいくつかのユビキチン化酵素によって、IKK(IkBキナーゼ)、TAK1(英語版)が動員され召集される。MALT1自体は、NF-κBシグナル伝達の阻害タンパク質であるA20を切断するカスパーゼ様タンパク質である(NF-κBのユビキチン化基質を脱ユビキチン化することで作用し、阻害効果を持つ)。TAK1は、ユビキチン化酵素によってシグナル伝達複合体に取り込まれた後、IKK三量体をリン酸化する。次に、IKKは、IkB(英語版)(NF-κBの阻害剤であり、NF-κBに結合している)をリン酸化し、タンパク質分解の目印を付けることでその破壊を誘導し、細胞質基質のNF-κBを遊離させる。その後、NF-κBは核に移動して特定の応答配列でDNAに結合し、転写分子の動員を誘発し、転写プロセスを開始する。 BCRにリガンドが結合すると、タンパク質BCAPのリン酸化につながる。これにより、ホスホチロシン結合SH2ドメインを持ついくつかのタンパク質が結合と活性化が起こる。そのタンパク質の一つがPI3Kである。PI3Kが活性化されると、PIP2がリン酸化され、PIP3が形成される。PH(プレクストリン相同性)ドメインを持つタンパク質は、新たに生成されたPIP3と結合して活性化するこができる。その中には、細胞周期の進行を促すFoxOファミリーのタンパク質や、グルコース代謝を促進するプロテインキナーゼDなどが含まれている。PHドメインを持つもう一つの重要なタンパク質はBam32である。Bam32は、Rac1やCdc42などの低分子GTPaseを動員して活性化する。これらは、次に、アクチンの重合を変化させることによるBCR活性化に伴う細胞骨格の変化に関与する。
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