ベルク【Alban Berg】
ベルク

ヴィーンの作曲家。音楽を愛好する家庭で育ち、独学で歌曲を作り始める。1904年にシェーンベルクに弟子入りし、ヴェーベルンも交えて第二ヴィーン楽派の中核となった。
作風は大きく3つの段階に分けられる。主題を統一し、揺らぎながらも調性感が残る初期、無調と動機展開による中期、十二音技法を獲得する後期である。12の変奏曲と、作品番号1を持つピアノ・ソナタは初期、シェーンベルクの指導の下で書かれた。
ベルクの創作においてピアノ独奏曲の比重は決して高くはない。むしろ、ピアノ伴奏つき歌曲こそ彼が幼い頃から生涯を通じて取り組んだ領域である。オペラ《ヴォツェク》(1914-22)と《ルル》(1928-35)に用いられたあらゆる手法は、未出版作品を含む多くの歌曲の中で培われた。
また、数や文字の象徴法、シンメトリックな形式など暗示を特に好んだが、音楽はそれに縛られることなく劇的な力を持っている。
アルバン・ベルク
(Alban Berg から転送)
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| アルバン・ベルク Alban Berg |
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| 基本情報 | |
| 生誕 | 1885年2月9日 |
| 死没 | 1935年12月24日(50歳没) |
| 職業 | 作曲家 |
| 活動期間 | 1907 - 1935 |
アルバン・マリーア・ヨハネス・ベルク(Alban Maria Johannes Berg, 1885年2月9日 - 1935年12月24日)は、オーストリアの作曲家。 アルノルト・シェーンベルクに師事し、アントン・ヴェーベルンと共に、無調音楽を経て十二音技法による作品を残した。十二音技法の中に調性を織り込んだ作風で知られる。
経歴
ベルクはウィーンで富裕な商家の子供として生まれた。幼い時から音楽や文学に興味を抱き早熟な少年時代を送る。15歳の時、父が没した頃から独学で作曲を試みるようになる。この時の現存する多数の歌曲は1980年まで封印されていた[1]。
1902年にはベルク家の別荘で働いていた女中、マリー・ショイヒル (Marie Scheuchl) との間の私生児(娘)の父となり、翌年にはギムナジウムの卒業試験に失敗して自殺を図るなど10代後半の私生活は波瀾に彩られたものだった。
1904年、ベルクの兄が弟の作品をシェーンベルクのもとに持ち込み、シェーンベルクや同門のヴェーベルンとの交友が始まる。ベルクはギムナジウム卒業後、公務員となるが作曲活動に打ち込むためわずか2年で辞職し、ウィーン国立音楽院に入学。
1907年、『4つの歌曲』作品2などの曲で本格的な作曲家デビューを飾る。
1908年7月23日、宿痾の病となる喘息を発病、この時23歳だったベルクは「23」という数字を自己の運命の数と決め、この数は以後の作品の構成を彩る事になる。
1911年、声楽を学んでいたヘレーネ・ナホフスキーと結婚。ヘレーネの母アンナはオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の愛人として知られ、ヘレーネは皇帝の庶子とも言われており、ベルクの周辺では気位の高い女性として知られていた。
1912年、初めて管弦楽を用いた『アルテンベルク歌曲集』作品4を完成するも、師シェーンベルクの反応は色よいものではなかった。翌年の部分初演は「スキャンダルコンサート」と呼ばれる大騒動になり、この歌曲集の完全初演はベルクの死の17年後まで持ち越される。
1914年、ゲオルク・ビューヒナーの戯曲『ヴォイツェック』の上演に接したベルクはこの戯曲を基にした無調のオペラの作曲を始める。この年に第一次世界大戦が勃発、翌年から兵役に服する事になり作曲が不可能になったが、1917年になって休暇を与えられ、歌劇『ヴォツェック』作品7の作曲再開に踏み切った。『ヴォツェック』の完成はその5年後の事である。
『ヴォツェック』完成後、シェーンベルク50歳の誕生日に献呈するべく、ピアノ・ヴァイオリン・13管楽器のための室内協奏曲に取り組むも50歳の誕生日(1924年9月13日)には間に合わず、1925年に完成する。
その同じ年に歌劇『ヴォツェック』がベルリン国立歌劇場でエーリヒ・クライバーの指揮によって初演された。初演にあたって34回ものオーケストラ練習と14回のアンサンブル練習が行われ、分奏を含めると総計150回の練習が行われたという。ベルクと指揮者には激しい批判も向けられたが、『ヴォツェック』は国際的に上演される作品となり、ベルクの作曲家としての名声は揺るがぬものとなった。この年、プラハ訪問中に知り合ったハンナ・フックス=ロベッティン(フランツ・ヴェルフェルの妹)との不倫関係が始まり、この関係から『抒情組曲』という音楽的果実が実る事になった。
1928年、フランク・ヴェーデキントの戯曲「地霊」および「パンドラの箱」に基づく歌劇『ルル』の作曲に取り掛かるも、翌年には『ルル』の作曲を一時中断、演奏会用アリア『ワイン』を作曲した。
『ヴォツェック』の成功によって順調であるかに見えたベルクの作曲家人生は、1933年のナチス・ドイツ政権発足によって暗転する。師シェーンベルクと共に(ベルクはユダヤ人ではないが)ベルクの音楽も「退廃音楽」のレッテルが貼られ、ドイツでの演奏が不可能になる。
1935年、アルマ・マーラーと彼女の2番目の夫ヴァルター・グロピウスとの娘で、ベルクも可愛がっていたマノン・グロピウスの訃報に接し、『ルル』作曲の筆を再び置いて、彼としては異例の速筆でヴァイオリン協奏曲(「ある天使の想い出に」)を書き上げる。しかし元来病弱だったベルクは作曲中に体調が悪化し、完成前後の8月には虫刺されが原因で膿瘍ができる[2]。治療によって回復するものの、腫れ物ができやすい体質[3]の彼は、断続的な再発のすえ12月に敗血症を併発、12月24日未明に50年の生涯を閉じた。
未完のまま遺された『ルル』は、完成していた2幕までと『ルル組曲』の抜粋という形で初演されたが、未亡人ヘレーネは補筆を禁じ、3幕の形での『ルル』(フリードリヒ・ツェルハ補筆版)初演はヘレーネ没後の1979年にパリのオペラ座にて行われた(パトリス・シェロー演出、ピエール・ブーレーズ指揮)。ヘレーネがここまで頑なになったのは、第二次世界大戦後にショイヒルの子と会ったこと、ベルクとハンナとの不倫を知ったことによる夫への反感から情報をコントロールしようとしたことが原因であるとする説もある[4]。
その他
小惑星(4528) Bergはベルクの名前にちなんで命名された[5]。
主要作品
- 7つの初期の歌曲
- ピアノ・ソナタ op. 1
- 弦楽四重奏曲 op. 3
- アルテンベルク歌曲集 op. 4
- 管弦楽の為の3つの小品 op. 6 (1914年 - 1915年/1929年改訂)
- 歌劇『ヴォツェック』 op. 7 (1925年初演)
- 室内協奏曲 (1923年 - 1925年)
- 抒情組曲 (1925年 - 1926年)
- ヴァイオリン協奏曲 (1935年)
- 歌曲集「私の両眼を閉じてください」
- 演奏会用アリア『ワイン』
- 歌劇『ルル』(1928年 - /未完成)
- 編曲
- フランツ・シュレーカーの歌劇《はるかなる響き》のヴォーカルスコア(1911年)
- アルノルト・シェーンベルクの《グレの歌》のヴォーカルスコア(1912年)
- シェーンベルクの《弦楽四重奏曲第2番》の後半2楽章(同上)
- ヨハン・シュトラウス2世のワルツ《酒、女、歌》(1921年)
関連文献
- Ingo Müller: Lulu. Literaturbearbeitung und Operndramaturgie: Eine vergleichende Analyse von Frank Wedekinds Lulu-Dramen und Alban Bergs Oper Lulu im Lichte gattungstheoretischer Reflexionen (= Rombach Wissenschaften: Reihe Litterae. Band 177). Freiburg i. Br. 2010.
- Cordula Knaus: Gezähmte Lulu: Alban Bergs Wedekind-Vertonung im Spannungsfeld von literarischer Ambition, Opernkonvention und „absoluter Musik“ (= Rombach Wissenschaften: Reihe Cultura. Band 38). Freiburg i. Br. 2004.
- Ingo Müller: Einflüsse der Kinematographie auf die Dramaturgie von Alban Bergs „Lulu“. In: Nils Grosch (Hrsg.): Aspekte des modernen Musiktheaters in der Weimarer Republik. Münster 2004, S. 335–369.
- Siglind Bruhn: Die musikalische Darstellung psychologischer Wirklichkeit in Alban Bergs Wozzeck. Peter Lang, Frankfurt 1986, ISBN 3-8204-8951-7.
- Hans-Heinz Dräger: Berg, Alban. In: Neue Deutsche Biographie (NDB). Band 2, Duncker & Humblot, Berlin 1955, ISBN 3-428-00183-4, S. 73 (電子テキスト版).
- Constantin Floros: Alban Berg - Musik als Autobiographie. 1992, ISBN 3-7651-0290-3, ISBN 978-3-7651-0290-5.
- Anton Fuchs: Auf ihren Spuren in Kärnten – Alban Berg, Gustav Mahler, Johannes Brahms, Hugo Wolf, Anton Webern. Verlag Carinthia, Klagenfurt 1982, ISBN 3-85378-601-4.
- Armin Lücke (Hrsg.): Franz Grundheber und Wozzeck. Verlag Matergloriosa, Trier 2008, ISBN 978-3-940760-05-0.
- Soma Morgenstern: Alban Berg und seine Idole. Aufbau, Berlin 1999, ISBN 3-7466-1455-4.
- Theodor W. Adorno: Berg. Der Meister des kleinsten Übergangs. Suhrkamp, Frankfurt am Main 1982, ISBN 3-518-01575-3.
- Erich Alban Berg: Alban Berg – Leben und Werk in Daten und Bildern. Insel Verlag Frankfurt am Main 1976, ISBN 3-458-01894-8.
- Werner König: Tonalitätsstrukturen in Alban Bergs Oper „Wozzeck“. Schneider, Tutzing 1974, ISBN 3-7952-0131-4.
- Alban Berg Kammermusik I., (= Musik-Konzepte. 4). Hrsg. von Heinz-Klaus Metzger und Rainer Riehn. Edition Text + Kritik, München 1978, ISBN 3-921402-66-2.
- Alban Berg Kammermusik II., (= Musik-Konzepte. 9). Hrsg. von Heinz-Klaus Metzger und Rainer Riehn. Edition Text + Kritik, München 1979, ISBN 3-88377-015-9.
- Peter Petersen: Wozzeck (= Musik-Konzepte. Sonderband). Hrsg. von Heinz-Klaus Metzger und Rainer Riehn. Edition Text + Kritik, München 1985, ISBN 3-88377-214-3.
- Alban Berg Studien Band 2 (= Alban Berg Symposion 1980). Universal Edition, Wien 1981, ISBN 3-7024-0158-X.
- 50 Jahre Wozzeck von Alban Berg (= Studien zur Wertungsforschung. Band 10). Hrsg. von Otto Kolleritsch. Universal Edition, Wien 1978, ISBN 3-7024-0130-X.
- アルバン・ベルク. In: Österreichisches Biographisches Lexikon 1815–1950 (ÖBL). Band 1, Verlag der Österreichischen Akademie der Wissenschaften, Wien 1957, S. 71 f. (Direktlinks auf S. 71, S. 72).
- Letters to his wife / Alban Berg. Herausgegeben, übersetzt und kommentiert von Bernard Grun, Faber and Faber, London 1971, ISBN 0-571-08395-1.
- Brian R. Simms: Alban Berg: a research and information guide. Routledge, New York u. a. 2009, ISBN 978-0-415-99462-0.
- Herwig Knaus, Wilhelm Sinkovicz (Hrsg.): Alban Berg. Zeitumstände – Lebenslinien. Residenz-Verlag, Salzburg 2009.
- Christopher Hailey (Hrsg.): Alban Berg and his world. Princeton Univ. Press, Princeton, NJ u. a. 2010, ISBN 978-0-691-14856-4.
脚注
- ^ 今野哲也「歌曲史におけるアルバン・ベルクの初期歌曲の位置付け ―創作の開始から1903年まで―」『芸術研究:玉川大学芸術学部研究紀要』第8号、玉川大学、2017年3月、89-100頁、CRID 1050003824837547904、 hdl:11078/405、 ISSN 1881-6517、 NAID 120006868332。
- ^ Anthony Pople, Berg: Violin Concerto (Cambridge University Press, 1991) pp. 41-43.
- ^ H. F. Redlich, Alban Berg: The Man and his Music (J. Calder, 1957) p. 219.
- ^ ウィーン 音だより(3) ベルクとウィーン、佐藤卓史
- ^ “(4528) Berg = 1978 NB4 = 1979 SU3 = 1981 DX3 = 1983 PP = 1988 VF7”. MPC. 2021年10月9日閲覧。
関連項目
外部リンク
- Alban Bergのページへのリンク