20世紀前半: パルプ雑誌の時代
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「歴史改変SF」の記事における「20世紀前半: パルプ雑誌の時代」の解説
19世紀末から20世紀初期には、いくつかの歴史改変小説が登場している(例えば、Charles Petrie の1926年の If: A Jacobite Fantasy)。1931年、イギリスの歴史家サー・ジョン・スクワイア(Sir John Squire)は当時の有名な歴史家のエッセイを集めたアンソロジー If It Had Happened Otherwise を編んだ。この中で、それぞれの歴史研究者が例えば「もしスペインでムーア人が勝っていたら」とか「もしルイ16世がもう少し毅然としていたら」といった問題に答えている。非常に真面目な論文もあれば、ヘンドリック・ウィレム・ファン・ローン(Hendrik Willem van Loon)のようにマンハッタンがオランダ人の都市国家として独立した世界の空想にふけっているものまで様々である。他の著者としては、Hilaire Belloc、アンドレ・モーロワ、ウィンストン・チャーチルなどがいた。 歴史改変で人気のあるテーマは、欧米では「ナポレオンの勝利」と南北戦争である。スクワイアのアンソロジーで、チャーチルは「もしリーがゲティスバーグの戦いに勝利していなかったら」という問題に対して、アメリカ連合国が勝利した世界の歴史家の立場から南北戦争を考察し、南軍が勝っていたらどうなっていたかを論じた(言い換えれば、ありうべきもう1つの世界の人間が我々のいる現実の世界を想像するという形式で書いている。ただし、その想像が全て当たっているとは限らない)。 同時期の歴史改変作品の例として(パラレルワールド間の移動を扱った初の小説でもあるが)、H・G・ウェルズの『神々のような人々』(1923年)がある。この中で主人公たちは時空を移動できる機械に遭遇して、一見して平和なユートピアと思われるイギリスに到着する。ウェルズが描いたのは多元宇宙論的なパラレルワールドであり、後にアメリカのパルプ雑誌でよく使われる設定になった。 1930年代になると歴史改変小説はさらに新たな段階に至った。1933年12月の「アスタウンディング」誌で Nat Schachner の "Ancestral Voices" が掲載され、すぐにマレイ・ラインスターの『時の脇道』 "Sidewise in Time" が続いた。それまでの歴史改変小説が比較的単純な歴史の分岐を扱っていたのに対して、ラインスターは全く異なる試みを行った。彼が描いたのは、年表がつぎはぎになった発狂した世界(20世紀にローマ帝国の軍隊やバイキングが現れる世界)であった。
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