20世紀前半 - 様式論とイコノロジー
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「美術史」の記事における「20世紀前半 - 様式論とイコノロジー」の解説
ヴェルフリン 20世紀の美術史学は、こうした基礎の上にさらに多様な発展を見せる。アロイス・リーグルは大著『末期ローマの美術工芸』 (1901) において、広範な地域と時代におよぶ装飾モチーフの分類法と発展の法則を示した。この様式論はヴェルフリンによって理論化がすすめられ、とく彼は主著『美術史の基礎概念』(1915)で2つの時代様式、すなわち16世紀の「ルネサンス様式」と17世紀の「バロック」様式を五つの対概念によって定義してみせた。 またヴェルフリンは、様式が変わってゆく原動力を時代精神や民族性、個人の才能だけに求めず、造形上の形式自体の展開のうちにとらえた。この手法はアンリ・フォシヨン『形の生命』(1934) などに受け継がれ、様式のもつ規範的性格についての研究が蓄積されてゆく。 この過程で「様式」が自ら発展しながら美術の歴史を形づくってゆくと考える立場、すなわち「様式論」が一つの完成を見る。様式論は、その後に大きな修正と批判を受けながらも、ルネサンスやバロックといった様式概念とともに、現在にいたるまで、美術史学の基本的な分析視角としての力を保っている。 ヴァールブルクとパノフスキー 一方、エミール・マールの図像学的研究やマックス・ドヴォルシャックの精神史的研究の蓄積を経て、ヴァールブルクとパノフスキーの手によって、新しい方法論イコノロジー (図像解釈学)が産み落とされる。 ヴェルフリンらが代表する様式論は、美術作品を形態や表現形式といった外形を通じて分析しようとしていたが、新しいイコノロジーは、作品の主題や意味そのものに注目する。図像を象徴的価値をはらむものとして捉え、作品を生んだ文化全体に照らし合わせて作品の意味を解読しようとするイコノロジーは、20世紀前半の美術史において大きな勢力を形成した。 このような様々な方法論開拓の試みは、第2次大戦後もさらに進み、心理学や社会学・文化人類学など、隣接諸科学の成果を取り入れた美術史研究が盛んに発表された。作品の調査技術もX線の利用や化学分析など科学的方法の導入によって劇的に発展した。
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