20世紀における動向と新ロマン主義
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「ロマン派音楽」の記事における「20世紀における動向と新ロマン主義」の解説
「新ロマン主義音楽」も参照 19世紀に生まれた作曲家の多くは、20世紀に入ってからも、明らかに前時代とつながりのある作曲様式で創作を続けた。たとえば、 ジャコモ・プッチーニ リヒャルト・シュトラウス セルゲイ・ラフマニノフ クット・アッテルベリ がそうである。しかし、モダニズムの作曲家の中にも、初期にロマン派音楽の様式を採る者は少なくなかった。 アレクサンドル・スクリャービン(《ピアノ・ソナタ第3番》、《8つの練習曲》作品42) アルノルト・シェーンベルク(《浄められた夜》、《グレの歌》) ベーラ・バルトーク(《ヴァイオリン協奏曲第1番》) などのいくつかの管弦楽曲や 歌劇《青ひげ公の城》 カロル・シマノフスキ(ピアノのための《4つの練習曲》作品4) などの例がある。とはいえ、19世紀音楽の構造や表現技法は、単なる遺物というわけでもなかった。 レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト は、1950年以降もいちじるしくロマン派的な様式で作曲し続けている。 無調性や新古典主義などの新たな風潮は、ロマン派音楽の優位に挑んだものの、大作においては、調性指向の半音階的な音楽語法が顕在化している。 グスターヴ・ホルスト アーノルド・バックス セルゲイ・プロコフィエフ ディミトリー・ショスタコーヴィチ カール・ニールセン ベンジャミン・ブリテン サミュエル・バーバー マルコム・アーノルド らは、モダンな作曲家であるとの自覚を持っていたものの、作品においてはしばしばロマン派音楽の要素を引き継いでいた。 ロマン派音楽は1960年頃、レトリックとしても芸術的にもどん底にあった。未来は前衛音楽とともにあるかに思われた。パウル・ヒンデミットが、いかにもロマン主義に根ざした様式へと後ずさりする中、たいていの作曲家は別の道へ進んだ。保守的なソ連や中国のアカデミックな序列の中でだけ、ロマン派音楽がぴったりと収まったかに見えた。しかしながら1960年代の後半までに、ロマン派音楽の表現様式の復活が始まった。ジョージ・ロックバーグは、グスタフ・マーラーを模範に引き出し、音列技法から調性へと回帰した。このような試みには、ニコラス・モー(英語版)、ロバート・ヘルプス、デイヴィッド・デル・トレディチのような同志がいた。こうした動向は「新ロマン主義」とも評され、ジョン・コリリアーノの《交響曲第1番》などもその一つに数えられている。 ロマン派の音楽様式が生き長らえ、むしろ栄えてすらいる分野は他にもある。映画音楽の世界である。ナチス・ドイツを逃れて米国に移住したユダヤ系作曲家の多くは、ウィーンでグスタフ・マーラーに師事したか、その影響を受けていた。マックス・スタイナーによる華麗な映画音楽《風と共に去りぬ》は、ワーグナーのライトモティーフとマーラーの管弦楽法を用いた実例にほかならない。「ハリウッドの黄金時代」の映画音楽は、 コルンゴルト スタイナー フランツ・ワックスマン アルフレッド・ニューマン ヒューゴー・フリードホーファー らの創作に重きを置いていた。次世代の映画音楽の作曲家、 アレックス・ノース ジョン・ウィリアムズ エルマー・バーンスタイン らは、この伝統に従って20世紀後半を代表する映画音楽をいくつも残している。
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