鰭から肢へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 14:32 UTC 版)
魚類は、あらゆる哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類の祖先である。特に、陸生四肢動物は魚類から進化し、4億年前に初めて陸地に進出した。彼らは移動のために対の胸鰭と腹鰭を使用した。胸鰭は前肢(人間の場合は腕)に、腹鰭は後肢に発達した。四肢動物における歩行肢を構築する遺伝子機構の多くが、泳ぎを行う魚類の鰭の中にすでに存在している。 アリストテレスは同質構造と相同構造の違いを認識し、次のような予言的比較を行った。「鳥類は魚類に似ている。鳥には体の上部に翼があり、魚では体の前部に2つの鰭がある。鳥は下部に足があり、大部分の魚は下側の前鰭付近に2組の鰭がある」 - アリストテレス『動物進行論』 2011年、モナシュ大学の研究者は原始的ながら現生するハイギョを使って「腹鰭の筋肉の進化を追跡し、四肢動物の荷重を支える後肢がどのように進化したか」を調べた。シカゴ大学の更なる研究では、底を歩くハイギョが既に陸生四肢動物による歩行の足取りの特徴に進化していたことが判明した。 収斂進化の古典的な例として、翼竜、鳥類、コウモリの胸肢(pectoral limbs)は独立した経路に沿ってさらに飛行翼へと進化していった。飛行翼でさえも歩行脚と多くの類似点があり、胸鰭の遺伝的な設計図の中核という側面は残されている。 最初の哺乳類はペルム紀(2.9-2.5億年前)に出現した。これら哺乳類のうちクジラ目(クジラ、イルカ等)など幾つかのグループは海洋に戻っていった。近年のDNA分析で、クジラ目は偶蹄目から進化したもので共通祖先をカバと共有することが示唆されている。約2300万年前、クマみたいな陸生哺乳類の別グループが海に戻っていった。それがアザラシをはじめとする鰭脚類である。クジラ目と鰭脚類の歩行肢になったものは、新たな形状の遊泳鰭へと独立進化した。 前肢は足鰭になり、後肢は(クジラ目だと)失われたり(鰭脚類では)足ひれに変貌した。クジラ目では、尾の終端にフロック (fluke) と呼ばれる2本の鰭がある。 一般的に尾鰭は垂直で、左右方向へと動く。クジラ目の鰭棘は他の哺乳類と同じように曲がるため、クジラ目のフロックは水平方向かつ上下にも動く。 魚竜はイルカに似た古代の爬虫類である。彼らは約2億4500万年前に最初に現れ、約9千万年前に絶滅した。 「陸生の祖先でもあるこの海生爬虫類は、魚類へと非常に強く収斂したため、水中移動を改善するため背鰭と尾鰭を実際に進化させた。これらの構造は無からの進化であるため特筆に値する。陸生爬虫類の祖先には背中のこぶや尾の刃がなく、先駆けとしての役割を果たした」 生物学者スティーヴン・ジェイ・グールドは、魚竜が収斂進化の好例だと語った。 様々な形状をした様々な場所(手足、体、尾)にある鰭や足ひれも他の四肢動物の様々なグループで進化しており、ペンギンなどの潜水鳥(翼から変化)、ウミガメ(前肢が足ひれに変化)、モササウルス科(後肢が足ひれに変化)、ウミヘビ(垂直に展開して平たくなった尾鰭)などが挙げられる。
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