鰭・鰓の構造と脚の有無
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 14:21 UTC 版)
「オパビニア」の記事における「鰭・鰓の構造と脚の有無」の解説
オパビニアの様々な特徴の中でも、鰭と鰓の構造は更新頻度が最も高い部分であり、再記載(Whittington 1975、Bergström 1986、Budd 1996、Zhang & Briggs 2007、Budd & Daley 2011)ごとに解釈が変わる。また、化石標本の各胴節と鰭の間には、やや長い三角型の痕跡が1対ずつ並んでおり、この部分の正体に関しては、主に「消化管の枝」と「柔らかい脚(葉足)」という2つの仮説が繰り広げられてきた。なお、これらの部分の解釈の違いは、オパビニアの上述の分類学的位置にさほどの影響を与えていない(Whittington 1975 以外ではいずれも結論的にオパビニアの節足動物的性質を支持し、脚の有無は系統解析の結果を影響しなかった)。 Whittington 1975 では、第1胴節に鰓はなく、鰓は鰭から完全に独立した出っ張りの筋とされた。三角型の痕跡は内部構造だと思われ、消化管の枝、もしくは鰓に繋がる循環系の一部だと解釈された。 Bergström 1986 では、鰓は独立した出っ張りの筋ではなく、多数の細長い葉状の附属体でできている、鰭に沿って連結する櫛状の構造体と判明した。しかし、鰭が背板の出っ張り(pleurae)と解釈され、鰓はその腹面に連結すると考えられた。 Budd 1996 では、鰓は鰭の背面に連結すると判明した同時に、鰓の連結部は鰭の前縁直後にあり、第1胴節は Whittington 1975 のように鰓はないとされた。三角型の痕跡は内臓としてオパビニアの胴部に納めるには長すぎであると指摘され、側面に保存された化石標本ではその付け根も(側面にある)鰭の連結部からかけ離れてた腹面にあり、鰭から独立したことが示唆される。これは葉足の体腔由来の痕跡とされ、すなわち各胴節の腹側には1対の短い葉足があり、加えて各葉足の先端に爪があることも推測された。 Zhang & Briggs 2007 では、鰭の後縁は大きな切り込みで、そこに鰓が占めていると解釈された。三角形の痕跡の元素組成が元素マッピング(elemental mapping)で分析され、消化管と同じ成分をもつことが判明した。これを基に、Budd 1996 に提唱された葉足と爪の存在が否定され、この部分は(付け根が両腹面にある)鰭まで差し込んだ消化管の枝だと解釈された。 既存と新たな化石標本に基づいた Budd & Daley 2011 の再検証では、葉足の存在を断言しないものの、その可能性を支持し、Budd 1996 の解釈をほぼ認めつつ、Zhang & Briggs 2007 の多くの判断を否定する(爪の存在は否定的であることのみ認められる)幾つかの証拠が追記された。良好に保存されたオパビニアの鰭から完全の後縁が見られ、Zhang & Briggs 2007 に提唱される切り込みは存在しないことが証明された。鰭の鰓との連結部は Budd 1996 の解釈より少し後ろに位置し、第1胴節の鰭にも鰓があることも判明した。消化管と三角形の痕跡にある同様の元素組成は、吻など他の部位にも見つかり、消化管に限られるものではない。消化管の枝に該当する部位は、実はその痕跡とは全く別の部位である、数対の丸い消化腺であることも明らかにされた。葉足動物であるアイシェアイアの化石標本に見られる葉足の体腔痕跡とオパビニアの三角形の痕跡の類似性も示され、更に一部のオパビニアの化石標本からは、僅かであるものの、葉足の外皮組織に似た、環形の筋に分かれる構造も発見された。
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