食物の保存法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 15:33 UTC 版)
19世紀前半に缶詰製造が考案されるまで、食物の保存法は基本的に古代とあまり違いがなかった。もっとも単純で普及していたのは食物を熱や風に晒して水分を除去する方法で、腐敗の原因になるさまざまな好湿性の微生物の活動を劇的に抑制することができ、穀物から食肉まで風味が落ちることに目をつぶれば賞味期間はかなり延びた。南ヨーロッパの温暖な環境では食品を直射日光にあてるのが一般的だが、北方の冷涼な気候では干物の作り方として一般的な強風に晒す方法のほか、暖かいオーブン・地下室・屋根裏・生活空間も活用された。 食物の長期保存には、燻蒸・塩漬け・ピクルス・砂糖漬け・発酵など、食品を化学変化させる方法もつかわれた。このような方法は作業時間が短くてすみ、独特の風味が加わるなどの長所があった。秋に屠殺した家畜の肉を塩漬けや燻製にするのは、冬のあいだ必要以上の家畜に与えるえさを節約するための、一般家庭の戦略だった。バターには腐敗しないよう多量の塩(5-10%)を添加した。野菜・鶏卵・魚を塩水と酸性の液体(レモン汁・未熟ブドウ果汁・酢)を入れた壜に漬けて密栓しピクルスにすることも多かった。その他、コンフィなど砂糖・蜂蜜・油脂をつかって加熱調理し食品の周囲に被膜を作って保存する方法があった。バクテリアや菌類による発酵もいろいろな方法でよく利用された。穀物・果実・ブドウはアルコール飲料にして腐敗を防ぎ、乳は発酵させ保存処理をしてさまざまなチーズやバターミルクにした。
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