食物の汚染
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 09:26 UTC 版)
カドミウムは亜鉛に伴って産出するため、公害への関心が薄かった時代には亜鉛の精錬過程で環境に放出され、精錬所の下流域の土壌に蓄積された。また、カドミウムを使用する工場からも排水を通じて環境にカドミウムが放出された。1970年に通商産業省がメッキ工場、電気機器工場の排水を抜き打ち調査した結果、8割の工場で排水処理がされておらず、半数の工場で工場排水基準法の基準(当時0.1ppm)を超過した状態にあった。 土壌中に蓄積されたカドミウムは、土壌のpHが中性からアルカリ性では難溶であるために吸収され難いのに対して、土壌の酸化条件によりイオンとして溶出して農作物に吸収され、蓄積される。日本列島の土壌は、大半が中性から酸性であるためカドミウムが溶出し易い環境であり、このため食物がカドミウムによる汚染を受け易い状況にある。日本人は食事によってカドミウムを、1日当たり26 μgを平均して摂取していると見積もられている。 日本ではコメを始めとする食物に、カドミウムの含有基準が設けられており、基準値以上を含む農作物は販売が禁止されている。食品衛生法上は玄米において上限1 ppmと規定されており、これを超過した物は、全て焼却処分すると定められている。また、食糧庁通達により玄米中0.4 ppm以上が検出された場合は、食用にはされずに全て工業用途に回すとしてきたものの、2008年に発覚した汚染米問題で明らかになったように、糊原料には小麦粉が用いられており、コメの工業用の用途は確認されていない。 なお各国の含有基準は、台湾:0.5 ppm、韓国・中国・EU:0.2 ppm、タイ・オーストラリア:0.1 ppmである。2006年7月に開催されたコーデックス委員会総会において、国際基準が精米中に0.4 (mg/kg)とされた。 「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」も参照 国立がん研究センターによると、食品に含まれるカドミウムの長期摂取と、がん発症のリスクには明確な関連が見られないことが分かった。研究では、9府県の男女約9万人を対象に、喫煙や飲酒など、他のリスクを除いて、カドミウムの摂取量とがんの発症を調べたところ、相関は認められなかった。その理由として、食品に含まれるカドミウムの量が少ないことと、吸入ではなく摂取であることが考えられている。
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