食物と腸内微生物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/01 02:48 UTC 版)
食物は主に枯死した植物で、その主成分はセルロースである。しかし、下等シロアリではセルロースを分解する能力が低く、消化管内の共生微生物(主に原生動物)の助けを得ている。一方高等シロアリでは、シロアリ自身もセルロースを分解する酵素(セルラーゼ)を持っていることが確認されている。これは遺伝子の水平伝播を示唆していると考えられている。シロアリの腸内共生原生生物は、セルロースを酢酸まで分解し、これをシロアリの栄養源として提供する。 下等シロアリ類では消化管内に住む共生原生動物の酵素で植物繊維のセルロースを分解し消化吸収する。共生しているのは超鞭毛虫類や多鞭毛虫類が中心で、そのほとんどはシロアリの腸内のみに生息している。キノコシロアリ等、熱帯で繁栄する高等シロアリ類(シロアリ科)では共生原生動物を欠き、グループにより、担子菌のキノコや細菌などと共生関係を持つ。体内の原生生物自身は、酢酸に分解する間にエネルギーを得るが、この過程で二酸化炭素と水素が発生し、さらに二酸化炭素と水素から酢酸またはメタンが生成される。 担子菌類と共生するキノコシロアリ類は、巣の中に菌類培養室をいくつも持っている。野外から植物遺体を採集してくると、まずそれを食い、その糞を積み上げる。共生菌がその上で成長し、糞に含まれる成分を分解する。シロアリはその塊の底から食ってゆき、また糞をその上に積み上げる。これを繰り返してゆけば、積み上げられた糞の中の成分は次第に分解され、シロアリは食ったものの中から吸収できる成分を吸収する。吸収できなかった成分は再び糞として積み上げられ、すべてが吸収できるまで循環することになる。そのため、シロアリの巣内に持ち込まれた植物遺体は二酸化炭素と水になるまで分解され、土壌形成という形で広い範囲の土地を肥やすことにはならないとも言われているが、シロアリは腸内に窒素固定菌を飼っており、窒素循環の一翼を担い、巣の近辺には無機栄養塩が濃集することで植物の生育がよくなることが知られている。 腸内微生物の中にはPCB(ポリ塩化ビフェニル)を分解する種も見つかっている。
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