適切な方法で実験条件を振る/キザむこと(条件の振り方と条件出し)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 04:44 UTC 版)
「科学的方法」の記事における「適切な方法で実験条件を振る/キザむこと(条件の振り方と条件出し)」の解説
科学的な実験においては、適切な方法で「実験条件を振る」こと「条件出し」をすることが必要となる。このような行為は、特に技術者や工学者の間では「条件を振る」、「条件を出す」という用語で表現される。これらの用語は、慣用的な使われ方をされることが多く、意味範囲が広い場合も狭い場合あるため、本記事では以下意味で用いることにする。 条件を振る:複数の条件で実験してみること/試作してみることによって、目的にかなった実験/作成条件を探索すること。 条件出し(条件を出す):複数の条件で実験してみること/試作してみることによって、目的にかなった実験/作成条件を見出すこと。 例えば、「大砲の射出角度を0度から90度まで1度刻みでキザみ、最も砲弾の飛行距離が長い条件を見出だす」、「培地の組成成分として様々なものをためし、細胞が最もよく育つ組成を見つける」、「乳牛の品種として、ホルスタイン、ジャージのどちらが沢山牛乳を出すかを調べる」といった実験は「条件出し」の一例である。 「条件出し」には、「実験条件」(因子)と「評価観点」が少なくとも定められていなければならない。 実験条件(因子):上の例においても「大砲の射出角度」、「細培地の組成成分」、「乳牛の品種」がこれに相当する。実験条件の探索の仕方としては、単因子実験(「大砲の射出角度」のように1つの因子の影響だけを検討する)であっても、多因子実験(培地成分のうち、グルコース、リジン、ビタミンCの濃度を振るといったように、複数の因子の影響を検討する)であってもよく、必ずしも(実験計画法等の)理論に裏付けられた手法に基づけられた探索手法であるとは限らない。また、因子としては、「XXの濃度」、「射出角度」のように数字で定量化可能な「パラメータ」であることもあれば、「材料名」、「品種」、「タイムコース」のように数字で定量化出来ない「種類」であることもある。 評価観点:上の例においては、「砲弾の飛行距離」、「細胞が最もよく育つ」がこれに相当する。評価観点は「目標値」や「評価関数」を設定する形で定量化される。評価値、即ち実験データが基準値の中に入って入ればよいとする立場もあれば、評価値をプロットした特性曲線の形が望ましい形状であることと立場もあれば、評価値を変数とする評価関数が最大、最小、目標値に最も近いといったことを以て目標に合致していることを評価することもある。場合によっては経験的な識見に基づいて「不具合などの有無」を総合的に判定する場合もある。評価基準の設定や、評価基準の定量化は、実験全体の目的(上位の目的)や、設計仕様に依存する。 基本的なレベルにおいては、条件の振り方は以下のような考え方がなされる 複数のパラメータを同時に動かすな(安易に「多因子実験」をするな) 最適値や目標値に近いと思われる条件では細かく条件を振れ このような考え方の根底には、「条件出し」は、「評価値(実験データ)を、実験条件に基づいて比較する」という基本的な考え方がある。因子や評価基準を複雑に考えると、「何と何を、何に基づいて比較しているのか」がわかりにくくなる。 しかし、現実には複数のパラメータが因子となり得て、さらにはパラメータ間の交互作用が考えられる。検討するパラメータの数が多くなれば多くなるほど、パラメータの刻み方が多くなれば多くなるほど「組み合わせ爆発」ともいえる様な現象が起こり、評価すべき「実験条件の組み合わせ」が膨大となる。このような問題に対して、タグチメソッド等の手法が存在する。 また、現実の問題では「良し悪し」は複数種類のデータに基づいて総合的に判断せねば評価できないことも多い。例えば「家を買う」という(条件出しというにはあまりに日常的な)ですら、問題に対しても評価観点として、「駅から近く、閑静で、値段も安く、…」というように多数のの観点が存在する。これらの評価観点には、当然トレードオフが存在する(駅からの距離と値段とは両立しないというように)ため、それぞれの評価観点に適切な重みづけをする等をしたり、より複雑な場合には何らかの評価関数を設定する等が行われる。 条件を振る際には、「実験条件のキザみ方」も問題になる。「実験条件のキザミ方」というのは、「どの条件を細かく振るか」といった事柄を指し示す概念で、初等的な理解としては、 実験結果に支配的な影響を及ぼすパラメータは広いレンジで条件を振る。 最適条件に近いと思われる条件の付近では細かく条件を振る。 広いレンジで傾向を見る(粗探索)ときは試行回数は少なくてもよいが、最適条件に近いと思われる条件については充分な試行回数で実験する(Nを稼ぐ)のが望ましい。 といったことがよく言われる。このようにすることで、より良い条件が見つかったり、最適条件のロバスト性が評価出来たり、少ない回数で信頼性に高い結果がえられたりといったメリットがある。 先述の「大砲の射出角度」では、例えば「まず5度間隔で粗く条件を振り、飛行距離が長かった条件の付近だけ1度キザミで条件を振る」といったことをすることですべてのレンジで平等に1度キザミで条件を振るよりも効率よく条件出しができよう。
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