過剰診断の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 14:53 UTC 版)
「注意欠陥・多動性障害」の記事における「過剰診断の問題」の解説
「病気喧伝」も参照 2010年の米国では、ADHDと診断された児童450万のうち100万人が不適切な診断、誤診である可能性が指摘されている。製薬会社のマーケティングの影響で診断数は膨れ上がってきている。DSM-5(2013年)より、さらに成人への診断が緩和され診断が流行となり、薬の過剰処方がもたらされる可能性がある。 仕事に飽きがきているとか、完ぺき主義とか、集中力や遂行能力に不満があるだけの正常な人にレッテルが貼られ、他の原因によって症状が出ている人、そうした原因を排除しない限り不当な精神刺激薬による治療によって問題が悪化しかねない。 DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長は、製薬会社に利用されるような診断名の追加は退けたと思っていたが、マーケティングは容易くこれを突破してしまい、DSM-IV発表以降、米国で注意欠陥障害が3倍に増加したことについて、「注意欠陥障害は過小評価されていると小児科医、小児精神科医、保護者、教師たちに思い込ませた製薬会社の力と、それまでは正常と考えられていた多くの子供が注意欠陥障害と診断されたことによるものです」と指摘している。カナダの研究によれば、注意欠陥障害の最も正確な予測因子の一つは入学月である。9月入学のカナダでは8月生まれの子供がクラスで最年少になるが、最年少ゆえの未成熟な行動が異常と判断されてしまう場合がある。こうした傾向はアメリカ、台湾、アイスランドの研究でも同様で、単なる未熟性が病気のように扱われてしまっている。フランセスは、「米国では、一般的な個性であって病気と見なすべきではない子供たちが、やたらに過剰診断され、過剰な薬物治療を受けているのです」と述べている。これは日本も同様である。注意障害雑誌を創刊し、またMTA研究を主導したキース・コナーズも、過剰診断と精神刺激薬の過剰処方に注意を促し、こうしたことは他の精神衛生上の問題を見えなくしてしまっていると感じていた。 児童の権利に関する条約は、注意欠陥多動性障害(ADHD)が、薬物治療によって治療されるべき疾患であるとみなされていることを懸念し、診断数の推移の監視や調査研究が製薬会社と独立して行われるようにと提言している。アメリカでは製薬会社による販売促進によって、5%の推定有病率を超える、子供の15%がADHDの診断を受けており、投薬から明らかに恩恵を受ける子供の割合は1%を超えないと考えられる。例えばアデロールの製薬会社は、ヒーローが薬について言及している漫画を5万部配った。アメリカ疾病管理予防センター (CDC) は、行動療法が優先されるが、75%が投薬を受けていることに注意を促している。
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