転換手当
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 05:59 UTC 版)
事業者は、次の各号に掲げる労働者が常時粉じん作業に従事しなくなったとき(労働契約の期間が満了したことにより離職したときその他厚生労働省令で定める場合を除く。)は、その日から7日以内に、その者に対して、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ平均賃金の当該各号に掲げる日数分に相当する額の転換手当を支払わなければならない。ただし、厚生労働大臣が必要があると認めるときは、転換手当の額について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる(第22条)。 第21条の規定による勧奨を受けた労働者又はじん肺管理区分が管理三ロである労働者(2.に掲げる労働者を除く。) 30日分 第21条の規定による指示を受けた労働者 60日分 法制定時は、都道府県労働基準局長の勧告を受けて常時粉じん作業に従事しなくなった労働者のみを転換手当の支払いの対象としていたが、昭和53年の改正法施行により、作業転換の努力義務の対象者を拡大したことに伴い、転換手当の支払いの対象者をも拡大するとともに、都道府県労働基準局長から作業転換の指示を受けた労働者については、作業転換が極めて重要であり、これを早急に行うことを促進するため、平均賃金の60日分に相当する額の転換手当を支払うべきこととしたものである(昭和53年4月28日発基47号)。 「厚生労働省令で定める場合」とは、以下の通り(施行規則第29条)じん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が決定される前に常時粉じん作業に従事しなくなったとき、又はじん肺管理区分が決定された後、遅滞なく、常時粉じん作業に従事しなくなったとき。 新たに常時粉じん作業に従事することとなった日から3月以内に常時粉じん作業に従事しなくなったとき(1.に該当する場合を除く。)。1.及び2.は、当該事業場で粉じん作業に従事した期間がごく短期間であり、当該労働者のじん肺管理区分が管理三であることについては当該事業者の責任はないと考えられることから、転換手当の支払義務を除外したものであること。「遅滞なく」とは、事業者が都道府県労働基準局長からじん肺管理区分の決定の通知を受けた日からおおむね1カ月程度の期間をいうこと(昭和53年4月28日基発250号)。 疾病又は負傷による休業その他その事由がやんだ後に従前の作業に従事することが予定されている事由により常時粉じん作業に従事しなくなったとき。「その事由がやんだ後に従前の作業に従事することが予定されている事由」には、景気変動による一時帰休、ストライキによる休業、労働組合専従のための休職等が含まれること。なお、このような事由により休業した後、従前の作業に復帰することなく粉じん作業以外の作業に常時従事することとなつたとき、又は離職したときは、その時点で転換手当が支払われるべきものであること(昭和53年4月28日基発250号)。 天災地変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となったことにより離職したとき。 労働者の責めに帰すべき事由により解雇されたとき。4.及び5.の解釈は、労働基準法第20条1項但書の解釈と同一であること(昭和53年4月28日基発250号)。 定年その他労働契約を自動的に終了させる事由(労働契約の期間の満了を除く。)により離職したとき。「労働契約を自動的に終了させる事由」には、休職期間の満了等が含まれること(昭和53年4月28日基発250号)。 その他厚生労働大臣が定めるとき。 転換手当は、作業の転換を要する労働者が粉じん作業から転換することを促進するための措置であるとともに、他面永年親しんできた職場を離れることに伴う見舞い金としての意味合いを併せて持つものであること。「常時粉じん作業に従事しなくなったとき」とは、作業転換した場合のみでなく、離職した場合も含むものであるが、労働者の種々の離職要因のうち転換手当の性格からその趣旨に合わないことが客観的に明らかであるもの(例えば労働契約の期間満了による離職)については、事業者の転換手当の支払義務を免除することとしたものであること。転換手当に係る平均賃金の算定に当たっては、当該労働者が常時粉じん作業に従事しなくなった日をもって、労働基準法第12条の「算定すべき事由の発生した日」とすべきものであること。但書の「厚生労働省令で別段の定め」は、当面定める予定がないこと(昭和53年4月28日基発250号)。 租税その他の公課は、転換手当を標準として課することができない(第36条)。転換手当の支払を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない(第37条)。転換手当の支払を受ける権利は、これを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅する(第38条)。
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