軍用船舶としての原子力船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 01:02 UTC 版)
「原子力船」の記事における「軍用船舶としての原子力船」の解説
原子力は軍用艦船の動力としては一定の評価を受け、多数の原子力船が建造・運用されている。その主たる用途は原子力潜水艦と大型の航空母艦である。 潜水艦用としては、内燃機関や燃焼による蒸気ボイラーとは異なり酸素を必要とせず、乗員の呼吸に必要な酸素を「息継ぎ」の為の浮上を行う事なく、原子力発電による豊富な電力で海水を電気分解する事で得られる為、長期間潜行したままという運用が可能になる事が他の動力源では得られないメリットとされた。 航空母艦用としては長期作戦行動力をはじめ、下記の様々な利点がある。 潤沢な電力による良好な居住環境および長大な航続距離は、空母の外洋展開を支える上で大きなメリットである。 大型通常空母では機関燃料搭載が8000tにもなるが、それも不要。そのぶん航空燃料や航空兵装を増載でき、長期間の作戦行動を支えられる。 カタパルトは膨大なエネルギー・蒸気を消費するが、原子力艦であれば豊富な蒸気も持続供給可能。 排気を出さないので着艦の障害となる熱気流を発生させず、艦内の煙路も不要。 ガスタービン空母は舷側吸気口が浸水口となる可能性があるが、それも不要。 空母は通常、高速航行で向かい風を得ることによって艦載機の発着艦距離を短縮することが多い。しかし通常動力型では燃料を多量に消費しがちなため、原子力空母が有利。 逆に原子力化によるメリットが航続性能のみとなるミサイル巡洋艦などへの適用は、建造に通常動力型より大幅にコストがかかることなどから取りやめられている(参考:バージニア級原子力ミサイル巡洋艦)。 通常動力空母と原子力動力空母のライフサイクルコスト比較費用種別通常動力空母原子力空母開発費(Investment cost) 3,353.4億円(29.16億ドル) 7,407.15億円(64.41億ドル) 取得費(Ship acquisition cost) 2,357.5(20.50) 4,667.85(40.59) 中期近代化改修費(Midlife modernization cost) 995.9(8.66) 2,739.3(23.82) 運用・維持費(Operating and support cost) 12,793.75(111.25) 17,114.3(148.82) 直接運用・維持費(Direct operating and support cost) 12,001.4(104.36) 13,428.55(116.77) 間接運用・維持費(Indirect operating and support cost) 791.2(6.88) 3,685.75(32.05) 廃棄/処分費(Inactivation/disposal cost) 60.95(0.53) 1,033.85(8.99) 廃棄/処分費(Inactivation/disposal cost) 60.95(0.53) 1,020.05(8.87) 使用済み核燃料保管費(Spent nuclear fuel storage cost) なし 14.95(0.13) ライフサイクルコスト 16,208.1億円(140.94億ドル) 25,555.3億円(222.22億ドル) 比較 100% 157.7% 63.4% 100% 出典:アメリカ合衆国会計検査院1998年 通常動力と原子力の空母のコスト比較 セブモルプーチ(砕氷ラッシュ船兼コンテナ船)
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