踏み石論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 03:14 UTC 版)
詳細は「ゲートウェイドラッグ」を参照 日本において大麻を取り締まる大きな理由の一つに、いったん大麻を使うと他のドラッグをも使用するようになり、他の薬物への入り口となるという「踏み石理論(ゲートウェイ・ドラッグ理論)」がある。これは1950年代にアメリカの麻薬取締り機関が広めた考えであるが、近年は欧米の政府機関によりこの理論についての再考察が盛んに行われている。下記に示す通り、近年の研究機関はその関係性について否定的である。下記の研究機関が1970年代〜1990年代に行った研究にも同様にゲートウェイ理論を裏付けているとするものがあり、同機関による最新の研究かに留意する必要がある。また、いずれの研究結果も欧米を対象としており、日本を対象としているものではない。 1997年のWHOの報告書でも、大麻使用者の大半は他の非合法な向精神薬の使用へと進まないとしている。 2005年のイギリス国会下院科学技術委員会の報告書は、様々なドラッグやゲートウェイ理論に関して幅広く考察しているが、この中で、イギリス国立薬物乱用センターのジョン・ストラングは、「(大麻をゲートウェイとする同じ論旨では)小学校に行くことはヘロイン中毒患者になるゲートウェイですが、そこに何らかのつながりを見出そうとは誰も思わないでしょう。」と語っている。また、薬物乱用諮問委員会会長、ロンドン大学名誉教授のマイケル・ローリンズは「若い頃のニコチンやアルコールの使用は、続く薬物の乱用に対してカナビスに比べはるかに広い入り口である。」と語っている。同報告書は「われわれには大麻のゲートウェイ理論を支持するいかなる証拠も発見できなかった。」と結論付けている。 2006年のヨーロッパ・ドラッグ監視センター (EMCDDA) の報告 では、ドラッグの多重使用について主に使用しているドラッグ別に使用者をグループ分けをして分析した結果、大麻を主なドラッグとしたグループは他のドラッグを使うこと自体が極端に少ないことが示された。もっともこの報告書には、そもそもゲートウェイ理論という考え方自体記載されていない。 国連薬物犯罪事務所(UNODC)は「オーストラリアでは、双子を使った大規模な研究が行われた。」「17歳までに大麻を使用した双子のうちのひとりは、使用したことのないもう一方の双子に比べ、その他の薬物使用、アルコール依存症、薬物乱用/依存症の割合が2.1倍から5.2倍に達した。認識されているリスク・ファクターを考慮に加えても、結果はほとんど同じであった。」と述べている。 この他、近年のアメリカ医学研究所 (IOM) の報告書や[要文献特定詳細情報]、オランダの研究でもゲートウェイ理論は否定されている。大麻が置かれている法的立場がこうしたゲートウェイになっているとの見解がある。
※この「踏み石論」の解説は、「大麻」の解説の一部です。
「踏み石論」を含む「大麻」の記事については、「大麻」の概要を参照ください。
- 踏み石論のページへのリンク