語源と名称
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/29 06:35 UTC 版)
「ヒンドゥー」 Hindu の語源は、サンスクリットでインダス川を意味する sindhu に対応するペルシア語。「(ペルシアから見て)インダス川対岸に住む人々」の意味で用いられ、西欧に伝わり、インドに逆輸入され定着した。同じ語がギリシアを経由して西欧に伝わって India となり、こちらもインドに逆輸入されて定着した。漢訳では「身毒」「印度」と表記され、唐代にインドへ旅した仏教僧玄奘による「印度」が定着している。インドが植民地化された時代にイギリス領インド帝国を支配した大英帝国側が、インド土着の民族宗教を包括的に示す名称として採用したことから、この呼称が広まった。そのため、英語のHinduは、まずイスラム教徒(ムスリム)との対比において用いられるのが現在では一般的で、イスラム教徒以外で小宗派を除いた、インドで5億人を超えるような多数派である、インド的な複数の有神教宗派の教徒の総称である。 同じくヒンドゥー教と訳される英語のHinduismは、最も広い意味・用法ではインドにあり、また、かつてあったもの一切が含まれていて、インドの歴史では先史文明のインダス文明まで遡るものであるが、一般的には、アーリア民族のインド定住以後、現代まで連続するインド的伝統を指す。このうち仏教以前に存在した宗教をバラモン教(Brahmanism)、特にヴェーダ時代の宗教思想をヴェーダの宗教(Vedic Religion)と呼ぶこともあるが、これは西欧で作られた呼び名である。インド哲学研究者の川崎信定は、これらの用法は、日本の漢訳仏典の中の仏教・内道に対応する婆羅門教(ばらもんきょう)の用法に対応していると言える、と述べている。 ヒンドゥー教を狭い意味で用いる場合、仏教興隆以後発達して有力になったもので、とくに中世・近世以後の大衆宗教運動としてのシヴァ教徒、ヴィシュヌ教徒などの有神的民衆宗教を意識しての呼び方であることが多い。 日本では慣用表記ではヒンズー教、ヒンド教、一般的にはヒンドゥー教と呼ばれるが、時にインド教と呼ばれることもある。中国、韓国でも「印度教」と呼ばれるが、現在のインドは世俗国家であり国教はなく、インド憲法では信教の自由が規定されておりインドでこのように呼ばれることはない。
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