語彙の整理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 06:15 UTC 版)
まず、あらゆる単語はイデオロギーに反するような意味を制限され、しかも、品詞間の転用が自在におこなえ、動詞にも名詞にも転用でき、さらに「-ful(フル)」をつけることで形容詞に、接尾辞の「-wise(ワイズ)」をつけることで副詞にも使えるようになっている。このため、意味の似た動詞、名詞、形容詞などが一つだけに整理されている。また、すべての過去形と過去分詞は「-ed」に単一化され、複数形は「-s」「-es」に、比較級は「-er」に、最上級は「-est」に完全に統一されている。このため、名詞の不規則な複数形や、動詞や形容詞の不規則変化や、「more」「most」といった語は廃止された。 また、否定を意味する接頭辞の「un- (アン)」をつけることで反対語が表現できるほか、「plus- (プラス、とても)」、「doubleplus- (ダブルプラス、非常に)」、「ante- (アンティ、前)」、「post- (ポスト、後)」、「up- (アップ、上)」などの接頭語をつけることで大半の語彙は置き換えることができたため、英語の基本語彙は相当な数が削減されている。 「good(良い)」は思想的に正統的で、指導者ビッグ・ブラザー(偉大な兄弟)を愛すること、というような意味に変わっており、「bad(悪い)」は「ungood(アングッド)」でこと足りるため廃止されている。このため、「ビッグ・ブラザーは悪い」というような意味を表現する言葉は存在しなくなっている。 正義、道徳、民主主義、宗教など異端的意味しか持たない語彙は完全に排除され、これらの概念をニュースピークで論理的に表現することはもはや不可能になっている。ニュースピークで生き残った言葉(例えば「equal (等しい、等しさ))からも、異端的な意味は失われている。1984年の時点では、「equal」という語の古い意味(「政治的な平等」など)を意識しながらイングソック的に正統なこと(人間には政治階級による格差があること)を話さなければならないため二重思考が必要になるが、ニュースピークに統一された暁には、もはや人々は「equal」という語に「政治的な平等」という意味があったことを理解できなくなり、犯罪思想をする危険は完全に消える。 すべての語は二音節または三音節の短さに縮められ、スタッカートのリズムで歯切れよく発音できるように工夫されている。これは、国民が話す際に口にする言葉について深い意味を考えることなく、「明確で正しい意見」だけを早口でまくしたてられるようにするためである。用語が少なくなってゆくことも、話したり演説したりする際の語彙の選択肢を減らし、物を考えずに「正しいこと」だけを話すことに貢献する。
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