語彙の分布
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 08:40 UTC 版)
秋田県内で語彙の対立が見られる場合、県北と県南で対立する場合が多い。しかし青森県の津軽方言と南部方言のようにある線に等語線が集中するようなものではなく、境界の位置は語彙によって異なる。また県北と県南の対立がある場合、中央部で錯綜した複雑な分布が見られることがある。。県北と県南の対立の典型は「走る」を意味する語に見られ、県北部で「ハシェル」、県南部で「サラウ」が用いられる。また「下駄に付いた雪の塊」を表す語は、県北部では「コンブ」が、県南部では「ボッコ」が広く用いられるが、山本地方から中央部にかけては「ゴッパ」「ゴッポ」「ゴップ」「ゴップリ」「ゴッコ」「ガッパ」「ガッポ」「ガッカモカ」「ガッカマッカ」「ダッポ」「コゴリ」「ユキコゴリ」など多様な語形が見られる。「蛙」を意味する語は、県北部で「ゲァロ」「モッケ」が、県南部で「ビッキ」が主に用いられるが、中央部には「ゲァロゴ」「ゲァルグ」「ゲァロビッキ」などの語形が見られる。「冷たい」を意味する語は、県北部では「シャッコエ」「シャッケ」「サッコエ」「サッケ」が、県南部では「ハッコエ」「ハッケ」が用いられる。 海岸部と内陸部で対立する分布を示す語もある。例えば「氷柱」を表す語は、内陸部では水溜りに張る薄氷と同じ語形の「シカ゜」「シカ゜マ」などで表現するが、海岸部では「タロンペ」「タロッペ」「タロゴ」などと呼んで薄氷と区別する。さらにかつての藩の違いを反映して、鹿角地方や由利地方に秋田県の他の地域と異なる語彙が分布していることもあり、鹿角地方では青森県や岩手県、由利地方では山形県の庄内地方と連続する語彙も見られる。例えば秋田県内で鹿角地方のみに見られる語彙である「シカ゜ワリ」(エンドウ)、「ジゴクソンバ」(ドクダミ)などは、青森県や岩手県にも見られる語彙である。 しかしながら、これらのパターンだけで説明できる語彙の分布はむしろ少なく、語彙ごとに境界線が異なり、また様々な語形が錯綜して分布していたり並存していたりすることも多い。 他地方との語彙の共有率を見ると、南秋田地方がどの地方に対しても高く、鹿角地方はどの地方に対しても格段に低い。一地方にのみ分布する語彙の数は南秋田地方が最も多く、河辺地方が最も少ない。一方、他地域には分布するのに一地方にのみ分布しない語彙の数は鹿角地方が突出して多い。これは、鹿角地方では隣接する青森県や岩手県の旧南部藩領で用いられる語彙が分布し、秋田県の他地域で用いられる語彙が用いられないという状況があることを示している。
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