誘電関数
誘電率
誘電関数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 17:39 UTC 版)
電場の変動が速い場合には、分極の時間的なずれが大きくなって履歴効果が無視できず、誘電率が定数にはならない。空間的な局所性を仮定すれば、履歴効果は畳み込みの形で D ( t ) = ∫ − ∞ t ε ( t − τ ) E ( τ ) d τ {\displaystyle {\boldsymbol {D}}(t)=\int _{-\infty }^{t}\varepsilon (t-\tau )\,{\boldsymbol {E}}(\tau )\,d\tau } と表わされる。積分区間が τ < t となっているのは因果律によるもので、時間 t より過去の電場によって決まることを表している。このことは積分核がヘヴィサイドの階段関数 θ を用いて ε ( t ) = k ( t ) θ ( t ) {\displaystyle \varepsilon (t)=k(t)\,\theta (t)} の形をしていることを意味する。 周期的に変動する電場の下ではフーリエ変換により周波数領域に移ることで畳み込みは D ( ω ) = ε ( ω ) E ( ω ) {\displaystyle {\boldsymbol {D}}(\omega )=\varepsilon (\omega )\,{\boldsymbol {E}}(\omega )} で表わされる。誘電率は周波数 ω の関数である誘電関数として記述される。なお、誘電関数が周波数に依存しない定数関数であるときは、フーリエ変換により時間領域に戻った時に積分核 ε(t) がインパルス的であり、τ = t の部分が取り出されて前述の誘電率と一致する。 誘電関数は一般に複素関数となるため複素誘電率とも呼ばれる。誘電関数の実部は誘電分極の大きさと電場との位相差を与えており、虚部は電気伝導やバンド間遷移による誘電損失を与えている。因果律からクラマース・クローニッヒの関係式が成り立ち、実部と虚部が関係付けられる。 物質の誘電関数を調べることで、その物質の電子物性や光物性に関する多くの情報を得ることができる。誘電関数は複素屈折率の二乗で求められ、これは光吸収スペクトルの測定から得ることができる。また電子エネルギー損失分光(EELS)の測定は損失関数を与える。
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