誘電関数とは? わかりやすく解説

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誘電率

(誘電関数 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/04 06:14 UTC 版)

誘電率
permittivity
量記号 ε
次元 M−1 L−3 T4 I2
種類 テンソル
SI単位 ファラドメートル(F m−1
CGS‐esu 無単位量
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誘電率(ゆうでんりつ、英語: permittivity)は物質内で電荷とそれによって与えられる力との関係を示す係数である。電媒定数ともいう。各物質は固有の誘電率をもち、この値は外部から電場を与えたとき物質中の原子(あるいは分子)がどのように応答するか(誘電分極の仕方)によって定まる。

定義

電束密度D電場の強度E として、誘電率は

で定義される。電束密度と電場の強度の間に線形関係を仮定すれば

と表される。誘電率は一般にテンソルになるが、等方性を仮定すればスカラーとなる。

真空中

特に真空においては等方かつ線形関係が成り立ち

と表される。比例係数 ε0電気定数(真空の誘電率)と呼ばれる物理定数である。

比誘電率

誘電率を電気定数で無次元化した

比誘電率と呼ばれる。

誘電体

誘電率は電磁場の下での誘電体の応答を表す物性量の一つである。誘電体が電磁場の中に置かれたとき、その内部には誘電分極が生じる。一般には誘電分極は電磁場の履歴にも依存する複雑な関数であるが、誘電率を考えるときは局所的に依存するものと考える。 外部電場の中に誘電体を置くと、外部電場からの静電気力を受けて誘電体を構成する原子核電子の平均的な位置が元の位置からわずかに移動する。これが誘電分極である。

外部電場を E0 とし、誘電体を構成する全ての原子核と電子が作る電場の強度を EP とすると、全体の電場の強度は重ね合わせにより

となる。分極による電場 EP は外部電場 E0 を弱める方向に生じるため、誘電体の内部の電場の強度は、誘電体がなかった場合に比べると小さくなる。 一方、誘電体が帯電していなければ、電束密度は誘電体の存在によって変化しないので

となる。誘電体内部の電場の強度は小さくなるが電束密度は変わらないので、比誘電率は1より大きくなる。

誘電分極の程度を表す物理量

を導入したとき、誘電分極 P の電場の強度 E による微分によって定められる電気感受率

となり、誘電率によって表される。

誘電関数

電場の変動が速い場合には、分極の時間的なずれが大きくなって履歴効果が無視できず、誘電率が定数にはならない。空間的な局所性を仮定すれば、履歴効果は畳み込みの形で

と表わされる。積分区間が τ < t となっているのは因果律によるもので、時間 t より過去の電場によって決まることを表している。このことは積分核ヘヴィサイドの階段関数 θ を用いて

の形をしていることを意味する。

周期的に変動する電場の下ではフーリエ変換により周波数領域に移ることで畳み込みは

で表わされる。誘電率は周波数 ω の関数である誘電関数として記述される。 なお、誘電関数が周波数に依存しない定数関数であるときは、フーリエ変換により時間領域に戻った時に積分核 ε(t)インパルス的であり、τ = t の部分が取り出されて前述の誘電率と一致する。

誘電関数は一般に複素関数となるため複素誘電率とも呼ばれる。誘電関数の実部は誘電分極の大きさと電場との位相差を与えており、虚部電気伝導バンド間遷移による誘電損失を与えている。因果律からクラマース・クローニッヒの関係式が成り立ち、実部と虚部が関係付けられる。

物質の誘電関数を調べることで、その物質の電子物性や光物性に関する多くの情報を得ることができる。誘電関数は複素屈折率の二乗で求められ、これは光吸収スペクトルの測定から得ることができる。また電子エネルギー損失分光(EELS)の測定は損失関数を与える。

関連項目

外部リンク


誘電関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 17:39 UTC 版)

誘電率」の記事における「誘電関数」の解説

電場変動速い場合には、分極時間的なずれが大きくなって履歴効果無視できず、誘電率定数にはならない空間的な局所性仮定すれば、履歴効果畳み込みの形で D ( t ) = ∫ − ∞ t ε ( t − τ ) E ( τ ) d τ {\displaystyle {\boldsymbol {D}}(t)=\int _{-\infty }^{t}\varepsilon (t-\tau )\,{\boldsymbol {E}}(\tau )\,d\tau } と表わされる積分区間が τ < t となっているのは因果律よるもので、時間 t より過去電場によって決まることを表している。このことは積分核ヘヴィサイドの階段関数 θ を用いて ε ( t ) = k ( t ) θ ( t ) {\displaystyle \varepsilon (t)=k(t)\,\theta (t)} の形をしていることを意味する周期的に変動する電場の下ではフーリエ変換により周波数領域に移ることで畳み込みは D ( ω ) = ε ( ω ) E ( ω ) {\displaystyle {\boldsymbol {D}}(\omega )=\varepsilon (\omega )\,{\boldsymbol {E}}(\omega )} で表わされる誘電率周波数 ω の関数である誘電関数として記述される。なお、誘電関数が周波数依存しない定数関数であるときは、フーリエ変換により時間領域戻った時に積分核 ε(t)インパルス的であり、τ = t の部分取り出され前述誘電率一致する。 誘電関数は一般に複素関数となるため複素誘電率とも呼ばれる。誘電関数の実部誘電分極大きさ電場との位相差与えており、虚部電気伝導バンド間遷移による誘電損失与えている。因果律からクラマース・クローニッヒの関係式成り立ち実部虚部が関係付けられる物質の誘電関数を調べることで、その物質の電子物性光物性に関する多く情報を得ることができる。誘電関数は複素屈折率二乗求められ、これは光吸収スペクトル測定から得ることができる。また電子エネルギー損失分光EELS)の測定損失関数与える。

※この「誘電関数」の解説は、「誘電率」の解説の一部です。
「誘電関数」を含む「誘電率」の記事については、「誘電率」の概要を参照ください。

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