複合車体傾斜システムの開発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 11:45 UTC 版)
「JR北海道キハ285系気動車」の記事における「複合車体傾斜システムの開発」の解説
「車体傾斜式車両#複合車体傾斜システム(ハイブリッド車体傾斜システム)」および「JR北海道キハ283系気動車#改造」も参照 JR北海道は発足初期から都市間輸送高速化の一環で、線区自体の設備改良と併せ、曲線高速通過時に左右定常加速度を抑えて乗り心地を向上させる車体傾斜装置を搭載した特急型気動車を投入・運用していた。 JR北海道が導入したのは、制御付き自然振子式車体傾斜(以下、振子式)、空気ばね強制車体傾斜の2種であり、前者については遠心力とそれを補助する油圧シリンダーにより車体を最大で内軌側へ6度傾斜(キハ283系の場合)、後者については台車の外軌側空気ばねを上昇させて車体を傾斜させることで最大で内軌側へ2度の傾斜を実現していた。 しかし、仮により高速での曲線通過を目指し車体を現状以上に傾斜させることとした場合、前者では傾斜こそ可能ではあるものの、車体傾斜により車体がロールする際の回転中心が床上にあるため、傾斜が大きくなるほど外軌側へ床面・重心が移動する。例えば6度傾斜の場合、重心は外軌側へ75 mm 移動するが、8度傾斜とした場合100 mm 移動することとなり、乗り心地は悪化する。また、後者はロールする際の回転中心が床下にあり重心移動量こそ小さいものの、もともと振子式より簡素で費用対効果に優れる車体傾斜として導入された経緯があり(キハ261系の項も参照)、技術的に現状の2度より大きな傾斜を行うことは困難であった。 この問題を解消するため、JR北海道は鉄道総合技術研究所(JR総研)・川崎重工業との共同開発により、新たな車体傾斜方式である複合車体傾斜システム(ハイブリッド車体傾斜システム)の開発を進めた。これは制御付き自然振子により内軌側へ6度傾斜させた上に台車外軌側空気ばねの上昇を組み合わせることで最大8度の車体傾斜を実施する、というもので、本則90 km/hの曲線の場合、140 km/h(+50 km/h)と、従来車より大幅に高い速度で左右定常加速度を抑えての通過を可能としつつ、重心移動量は振子式の6度傾斜を下回る68 mm に抑えることができる。 この車体傾斜については、2006年(平成18年)3月8日に開発成功が発表され、併せて試験台車N-DT283HX形が製作された。この試験台車はこの複合車体傾斜システムに加え、振子制御に用いるシリンダーに電動油圧式を採用、低重心化のため車輪径は 760 mm に縮小し、軌道への横圧を低減する自己操舵機構も装備されていた。 この台車は走行試験のためキハ283系(キハ282‐2007)に実際に装備され、2006年(平成18年)3月31日から4月1日未明にかけての夜間帯に函館駅から札幌駅へ向けて走行した様子が目撃されるなど、複数日にわたって試験が行われている。
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