衝撃のトレード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/29 11:01 UTC 版)
「ウェイン・グレツキー」の記事における「衝撃のトレード」の解説
NHLが劇的に変化を遂げる中で、1988年8月9日にグレツキーは同僚のマーティ・マクソーリー (Marty McSorley) 、マイク・クルシェルニスキ(Mike Krushelnyski)らとともに、オイラーズからアメリカ合衆国のロサンゼルス・キングスに移籍した。移籍の見返りは、選手として ジミー・カーソン (Jimmy Carson) 、マルタン・ジェリナ (Martin Gelinas) 、金銭(1500万ドル)並びにキングスの1989、1991、1993三ヵ年のドラフトにおける第一順目の選択権であった。 このトレードの情報が伝わると、カナダ国民の多くが憤慨したため、ある議員が政府に対しこれを止めさせるように働きかけを行ったり、オイラーズのオーナーであるポクリントン (Pocklington)の人形が公衆の面前で焼かれるなどの騒動があった。カナダ国内にはグレツキー自身を「裏切り者」とみなすものが増え、このトレード以降国内におけるグレツキー人気が凋落したとする見方もある。 一方グレツキーの移籍は、ロサンゼルスにおいて従来はアイスホッケーに関心を持たなかったファン層の掘り起こしにつながり、初年度の観客動員数を著しく増加させた。当時ロサンゼルス・キングスがホーム試合を開催したグレート・ウェスタン・フォーラムでは、プレーオフまでの各試合でチケットの売り切れが頻繁に起こった。かつてグレツキーが所属した強豪チームと比べるとキングスは弱小と目されたチームであったが、グレツキーは新生キングスをリンクの内外に渡って統率し、スタンレー・カップにおいて前年度覇者の古巣エドモントン・オイラーズに対し、1勝3敗の逆境から挽回して見事4勝3敗の優勝という衝撃的な大番狂わせを演じた。グレツキーの南カリフォルニアへの登場は「NHLの版図」を塗り替えたと評価する向きも多い。カリフォルニアには、3つのNHLチームが所在することとなった。 グレツキーの活躍したロサンゼルス・キングスは、1993年のスタンリー・カップ決勝進出でピークを迎えた。シリーズ初戦に勝利した後は、モントリオール・カナディアンズに4連敗を喫した。チームは継続的に選手やコーチを入れ替えたが、1998年まで再びプレーオフ進出すら果せず、長期低迷が続いた。 この低迷のはるか前から、グレツキーは痺れを切らし新天地を求めてキングスにトレードを申し出ていた。1996年2月27日に、パトリス・ターディフ (Patrice Tardif) 、ロマン・ボパット (Roman Vopat) 、クレイグ・ジョンソン(Craig Johnson)の3選手及びドラフトの選択権を交換条件として、グレツキーはセントルイス・ブルースに加入した。31試合(レギュラーシーズン及びプレイオフも含む)に出場し37得点を挙げ、地区の決勝において延長戦に突入した試合もあったが、大方の期待に反してチームや点取り屋のブレット・ハルとプレーの反りがあわず、同年7月21日にフリーエージェントとしてニューヨーク・レンジャースに移籍した。 グレツキーはレンジャースで3年間プレーし1997年の地区決勝進出に貢献した後、現役生活を引退した。NHL公式戦における最終出場戦は、1999年4月16日にカナダで行われた。また、引退試合は同年4月18日対ピッツバーグ・ペンギンズ戦で、この試合は延長戦に突入したが2対1で負けに終わった。この試合で歌われたカナダ国歌はグレツキーの旅立ちを惜しんで、O Canada, we stand on guard for theeの箇所はWe're going to miss you Wayne Gretzky(ウェイン・グレツキーがいなくなると寂しくなるなあ)と替え歌された。また米国国歌もthe land of the freeの部分がthe land of Wayne Gretzkyと替え歌された。また、16日、18日の両試合における第1位から第3位までのスター選手賞すべてがグレツキーに与えられた(注)。 (注)プロホッケーの場合、試合終了後にその試合のベストプレーヤー3人を選出し賞が与えられることがある。 2003年、グレツキーはエドモントン・オイラーズのNHL加入25周年記念を祝うため、リンク上に姿を見せた。「ヘリテイジ・クラシック(Heritage Classic)」と名付けられたこの試合はNHL史上初の野外試合であるが、先立って行われたエキシビジョン試合(対モントリオール・カナディアンズ)において、グレツキーは他のオイラーズOBとともに出場した。後にこの試合の模様はDVD化されている。
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